第3話

ひび
42
2018/02/05 21:52
「はぁー……」
今日は調理室を借りて試作をする予定だ。
昨晩から今朝にかけてめんたいやみんとす、その他大勢の友達と議論しあった結果わたしが瑛太に渡すのは生チョコフィナンシェとフロランタンになった。多少めんどくさいがまぁいい。
「それにしてもこれ、帰れるかな」
外を見ると白銀の世界が広がっていた。
大雪警報が発令されてもおかしくないような積雪量だ。
「えーいちゃん」
「わひゃあぁ!?い、いつからいたのっ!?」
「ついさっきから、かな」
いきなり抱きついてきた瑛太に驚きつつ瑛太をわたしから離す。
本当、こいつは変わらない。
いつまでも幼くて、いつまでも私に甘えてきて-それなのに、不思議と嫌な感じがしない。小さい頃から、ずっとずっとわたし達はこうだ。
-ああ、じゃあわたしも変わらないんだ。
超凄腕ゲーマーとしてネットにその名を馳せたとしても、わたしはわたしなんだ。
「ねぇ、瑛太」
変わらないなら、とわたしはこんなことを聞いた。
「瑛太はわたしのこと…好きだったりする?」


「!?え、あ、えーと…まぁ、幼馴染だからなー、好きだよ」
わたしはむすっとする。
「…それは幼馴染だから?」
私がそう聞くと瑛太は「え、あ、えと…」と物言いをはっきりさせなくなった。
「……まぁいいわ、じゃ、試作品の処理よろしく。わたしは帰る」
自分も恥ずかしくなって、足早に調理室を出ていくと頭の中は真っ白になった。
わたしは何を言っているのだろう、と。
ただそれだけ考えていた。
けれど答えは出ず頭の中は雪原のような真白を以前保ったまま、そしてとうとう家に着いてしまった。
「…どう、しよう」
-今日はネッ友と話す気にもなれない。
今日はログインボーナスだけ貰って閉じよう。
「瑛華」
「父さん…」
「……16日、引っ越すぞ」

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