前の話
一覧へ
次の話

第1話

幼馴染みの一言がはじまり
106
2018/01/29 09:28
恋-そんなもの、わたしには関係ないと思っていた。
わたしはネトゲが恋人だから。
わたしには中学から愛用しているPCとタブレット、スマホにPSPがあればそれで構わないから。
そう、思っていた。

-さて、ここで自問自答タ〜イム。

問-何故わたしはあの馬鹿な幼馴染を最近気にかけるようになった?

答-危なっかしい。ハラハラして見ていられない。……好き?

……………。

心情を整理しよう、きっと疲れているのかもしれない。
先程述べたようにわたしはネトゲが恋人で、恋愛なんてどうでもいい。ネトゲ-ネットゲームとそれができる設備があればそれでいい。
-じゃあなんでわたしは…

「花木!」

「えっ!?」

「いつまで寝てんだ、そんなに俺の授業がつまらなかったのか!?」

「え、えと……今何してるんですか?」

わたしのその一言に爆笑が生まれる。

「…この問題解けコラ!」

黒板を見ると数式がズラリと書かれていた。
ああ、今は数学か。なら問題無用。
数学はサバゲーで必須なのだよワトソンk…ってワトソンいねーよ馬鹿瑛華!
なんて一人漫才を心内でやりつつも問題をスラスラ解いていく。
え?寝ていた?-知らんな。
寝ていようが寝ていなかろうがサバゲー攻略のため……というかゲーム攻略のためならどんな手段も問わない。-チートと強くてニューゲームは消えろ、と思うけれど。

「はい出来た」

チョークの付いた手をぱんぱん、と払って席に戻る。
今は学校だから、素の自分を出すわけにはいかない。たとえ周りがゲームの話をしていてもだ。
カードゲームから始まりソシャゲ、サバゲー、パズルゲームetc………ありとあらゆるジャンルのゲームを小さい頃から暇な時間を見つけてはプレイしてきたわたしに不覚なし。勿論新しいゲームもチェック済み。抜かりなし。
「えいちゃんえいちゃん」

-ああ、聞き慣れたあいつの声が廊下に響き渡る。

「えいちゃーん」

「へわっぶ!おーまーえー……そろそろわたしに抱きつくのもやめる歳でしょ…?」

「えっへへー、えいちゃん見てたらえいちゃん引力で引き付けられたー!」

「………」

えいちゃん引力なんてふざけたことを言いながらわたしから離れない彼はわたしの幼馴染-相原瑛汰。

「てかえいちゃんってなったらあんたもじゃん」

「あ、ほんとだー。N極とS極で引き寄せられたー、なんつって?」

…ほんとにこいつは……。
先生に気づかれない程度に明るく染めた茶髪が目立つ瑛汰は以前わたしから離れない。

「そーいや明後日バレンタインじゃん?」

「えいちゃん俺になんかくれねーの?」

「!?」

バレンタイン……だと…っ!?
今までネトゲのチャット機能で「バレンタインなんてクソ喰らえ」とネッ友の皆と狂ったように騒いでいたバレンタインだと…!?
そ、それが明後日…!?

「…………」

「え、えいちゃん?」

「………欲しいの?」

絶望スマイルで聞くと瑛汰はうんと頷く。

-ネッ友の皆、ごめんね…。

わたし、今年のバレンタインはなんか作らないといけないみたい-……

プリ小説オーディオドラマ