そう言って、彼女は毛利探偵事務所を後にした。
一人、また一人、と毛利探偵事務所を後にする。
時刻は午後12時28分。
気がつけば、正午を回っていた。
そう言い、小五郎はパソコンを開いた。
時刻は午後23時52分。
今日が終わろうとしている
人々は眠りについている。
が、彼はまだ眠りにつかない。
いや、眠りにつくことが出来ない。
未来のこの国のために、
そう、正義のために。
だが、日付が変わる頃には
闇に蠢き影と共に動く、奴らと共にいるのだ
正義のために───────
正義の鎧を脱ぎ、影を身にまとい、
彼は車内に乗り込む。
運転中の車内で、ふと、昼間の彼女を思い出した。
瞳を閉じて、己を正す。
あぁ、だめだ。
疲れているのか。この仕事の前には余計なことは考えないようにしていたのに。
感情を、制御しなければ。
この国は、守れない、と。
瞳を開き、遠い昔の公園の景色を
───────頭からそっとかき消した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!