第31話

もう二度と
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2019/01/05 23:04
授業開始のチャイムがなってあたしは我に返った。


そうだ…


そうだよ…


この思いは消さなきゃ…


今ならまだ、止められる。


繰り返したくない。


繰り返しちゃいけない。


陽向はアイツとは違う。


そんなの、頭ではわかってる。


でも怖いんだ。


あたしには前に踏み出す勇気がない。


だから陽向とは…友達のままでいたいんだ。


「あなた…?

気分悪そうだけど、大丈夫か?」


「え…?」


陽向が心配そうにあたしの顔を覗く。


「へ、平気。」


あたしを見るな…


優しい言葉をかけてくれるな…


やめて…





それから5時限目まであたしはなるべく陽向と話さないようにした。


この気持ちを消すため。


陽向の優しさに気づかないようにするため。


だけど、話さなきゃ行けない時もある。


5時限目は実習。


陽向とペアを組んでやることになってしまった。


1番最悪…


「なぁ…

あなたほんとに大丈夫か…?」


「大丈夫だって!

いつもと変わんねーだろ?」


なるべく、いつも通り。


「いや…」


「ほんとに、大丈夫!」


あたしが言いながら立ち上がると、先生があたし達に気づいた。


「おい、そこ!

真面目にやれ!」


「す…すみません…」


あたしが作業に戻ろうとすると、1人の生徒が先生の元へ来た。


「せんせー、釘が足りません」


「お、じゃあちょうどいい…」


ニヤッと笑った先生はあたしたちを見た。





ったく…


なんであたし達がー!!!


倉庫から、釘を取ってこいと!!


まぁ、さほど遠くないからいいけど。


何回か来たことあるし、釘も…


「たしか、この辺だったよな?」


「あなたのせいで…」


「陽向のせいだろ!

あたしは大丈夫だって朝から言ってんのに…

あ、みっけ!」


釘の袋を持って外に出る。


預かった鍵で施錠。


「陽向は心配し過ぎなんだよ…」


あたしは歩き出す。


「心配になるよ。」


小声で陽向が何か言う。


「え?」


足を止めて振り返る。


「なんて言った?」


あんまり聞こえなかった。


「心配になるよ、あなただから。」

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