第27話

遥の恋バナ
703
2019/01/05 23:02
『キモイんだよ』


『ありえねー!』


『嘘に決まってんじゃん』


やめてっ。


もう言わないで。


お願いー…


「っはぁ、はぁっ…」


部屋の天井。


目尻を撫でると手に水がついた。


…泣いてる…。


…夢、か。


ゆっくり体を起こし、暗い部屋の中を見渡す。


ベッドの脇にある棚の上に置かれたデジタル時計は午前3時半を示していた。


まだこんな時間…


久しぶりに見たな、“あのとき”の夢…。


もう二度と思い出したくないのに…


どうしよう、もう1回寝れる気分じゃない。


続き見たくないし…


こんな夢に慄いてるなんてバカみたいだけど、それでも…


あたしは一生この悪夢に苛まれないといけないのかな…





「あれー、あなただ!

おはよー」


学校までの道を歩いていると遥とみっちゃんに会った。


「おふぁよ」


「あはは、眠そー」


「ちょっと早く起きちゃってさぁ…」


授業中寝そーだな…


「ねー2人に報告!」


遥があたしとみっちゃんの肩を寄せる。


「実は私…」


足を止め、声を潜める。


「彼氏が出来ましたっ!」


「えー!?」


「ほんと!?」


衝撃告白!


「いついつ??」


みっちゃんが話に食いつく。


「昨日、夜電話してて告られた」


「誰!?」


平野ひらの慧斗けいと

「えっ!

部長!?」


平野先輩は男子テニス部の部長だ。


それにしても、受験生が今から彼女作るってあるんだなぁー…


しかもあの人、特進科じゃなかったっけ?


「へぇーおめでと。」


おめでたいんだから、「おめでと」でいいんだよな?


「へへっ、ありがとー!」


「いつから好きだったのー?」


「めっちゃ突っ込んでくるじゃんみっちゃん。」


遥が笑いながら歩き出す。


「いつから、って言われると難しいなぁ…

テニス部って男子と女子で合同練習良くするじゃん?

去年一緒にプレーしてて楽しいなぁ、もっと話したりしたいなぁーって思うようになって…」


言いながら顔を赤らめる。


「先輩達が引退してから会う回数が減って寂しくなって…

先輩と時々会って話してるとテンパっちゃって目とか見れなくて…

それで好きなのかなぁって。」


「へぇ〜…」


「もー恥ずかしい!!」


遥は言いながら手を頬に添えた。


もっと話したい。


会えないと寂しい。


目を合わせられない。


上手く話せない。





そうか…


あたしは…

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