それから1週間、あたしと陽向は一言も口を聞かなかった。
席が隣で話さない日なんて今まで無かったのに。
別に、大したケンカじゃない。
てか、そもそもケンカ?
ただちょっとムカついたからってだけだったのに。
ここまで話さないと、どうやって話したらいいかもわからなくなる。
まぁ、話すような用事もないけど。
でも…
話したい。
なんだろう、この感じ。
意地はってるわけじゃない。
話しかけ方を忘れちゃったみたい。
ん〜どうしたものか…
「…どうしたの、そんな悩んだ顔しちゃって。」
遥の声が聞こえ、我に返る。
そうだ、今はお昼の時間。
ぼーっとしてたせいで掴んでいたはずのウィンナーが弁当箱の中に転がっていた。
「あぁ、いや、なんでもない。」
やばい、最近このことしか考えてない。
「まるで恋する乙女みたいだったよ?」
みっちゃんはニコッと笑う。
「え?」
コイスルオトメ?
「あー、まさかあなた、好きな人が!?」
「はぁ!?
ありえないし!!」
どう勘違いしてくれてんだ!
「誰のこと考えてたのかなぁ〜?」
みっちゃんの“ニコッ”が“ニヤッ”に変わる。
「別に、誰のこと考えたとかじゃなくて!
最近陽向と全然話してねぇなと思って。」
恋ではなく友情に亀裂が入ってる話だ。
「ヒナタ…?」
みっちゃんがポカンとする。
「陽向くんの苗字って高橋だっけ?」
遥が確かめるように聞く。
「おー。」
「あぁ、高橋くんか!
あの人もかっこいいよね〜!」
「みっちゃんは誰でも“かっこいい”だな…」
この前もたしか康輔のことかっこいいとか言ってたよな?
「誰でも、って訳じゃないも〜ん!
ただ、建築科にはそういう人が多いってだけ〜っ!」
「…んで、その、高橋くんと全然話せてないから話したいなぁ…って?」
「う、うん…」
「声聞きたいなぁ、って?」
「うん…?」
「なんか好きだなぁ…って?」
「うん…って、違うわ!」
あたしの反応が面白かったのか、2人はクスクス笑っている。
「違うのー?」
「違う!
ていうか、あたしに恋なんて似合わない!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。