「康輔、そっち抑えてて。」
「おーよ」
2時限目は実習。
今日の内容は組木。
木と木を釘とか使わず組み合わせるなんて、高校生にやらせるかぁ?
ムズすぎてさっきから失敗ばっかしてる。
それになんか、目の焦点が合わないんだよなぁ…
だから余計うまくいかねぇ…
「ちょっと、金槌取ってくるわ。」
そう言って立ち上がる。
「っ…」
急にあたしの目の前が歪んで真っ暗になった。
「…ん?」
ここは…?
ガバッと体を起こす。
いっ…!
頭にズキズキした痛みを感じる。
…ん、保健室か…。
…ん?
なんであたし、ここに…
「あのぉ…」
ベッドを囲うカーテンを少し開けて先生に声をかける。
保健室の先生は若くて優しい女の先生で、あたしは何度もお世話になってる。
「あら、起きた?」
先生は椅子から立ってこっちに来る。
「はい…」
「気分はどう?」
「まぁ、大丈夫です…。」
頭痛いし、寒気するけど。
「じゃあちょっと熱計ってみよっか。」
体温計がピピッ、と音が鳴って脇から抜くと37.4と記されていた。
それを先生に渡す。
「んー、やっぱりちょっと熱あるわね。
マスクしとこうか。」
マスクを手渡されるあたし。
「今親御さんには連絡入れたから、今日はもう帰りなさいね。
カバンは持ってきてもらうようにするから。」
「あ、あの…あたしなんで保健室に…?」
「あら、覚えてないの?」
「?」
んーと…
ダメだ、全然…
「花園さん、実習中に倒れたのよ」
「えっ…」
あ…
あの時か…!
確か、組木のために金槌を取りに行こうとして目眩が…
「それで、高橋くんが連れてきてくれたの。」
え、陽向が…?
そして先生は頬に手を当ててニコッと笑って言った。
「お姫様抱っこで」
「お、お姫様抱っこぉ!?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。