あたしは急いで玄関に向かい、ドアを開ける。
するとそこには康輔だけでなく、佐伯と陽向もいた。
「ど、どーしたんだよ?」
びっくりした…
「あぁ、花園、風邪だって聞いたからお見舞い。」
そう言ってコンビニの袋をあたしに差し出す。
「えっ…あ、ありがと…」
中にはプリンやらゼリーやらが入っている。
「優しーじゃん」
「別に、オレは隣の席だから先生にプリント頼まれただけだ。」
カバンから封筒を出してあたしに手渡す陽向。
「もー、そーゆーこと言わなくていいんだよっ」
せっかくちょっと感動したのに〜…
「ったく、昨日風邪ひくなって注意したのによー…」
ははは…。
ほんとにな…。
「いやぁ、まさかあたしも風邪ひくなんて思ってなかったよっ。」
多分熱はもう下がってるけどな。
「昨日って、2人で会ったのか?」
康輔が加わる。
「2人、っつーかあなたと妹が公園で遊んでてたまたまだけどな。」
「あぁっ!!」
あたしは思い出して叫んだ。
「っ、なんだよいきなり大声出して。」
佐伯が耳を塞ぎながら言う。
「マフラー!」
昨日借りたんだった!
急いで部屋まで行き、マフラーを取って戻る。
「あー、明日でもよかったのに。」
「それじゃあ陽向が寒いじゃん。」
「へー意外。
あなたでもちゃんと紙袋に入れて返すんだな。」
「なんだよ、失礼な!
するわっそれくらい!」
べー、と舌を出してみせると康輔は、わりぃ、と言って笑った。
「てか、なんでこんな早い時間に?」
いつもなら4時まで授業でそのあと部活もあるのに…
「忘れたか?
今日から面談週間だからはえーんだよ。」
あぁ、そーいやそうだったっけ。
「んじゃ、寒ぃし、もう帰るわ。」
「明日はちゃんと学校来いよっ!」
「おうっ、明日は行ける!
ありがとなー!」
手を振って3人の後ろ姿を見送る。
…と、ん?
1人、佐伯が走って戻ってきた。
「え、なんか忘れ物?」
つっても何も置いてないけどな。
家に上がってもないし。
「言い忘れ。
まぁ、聞いても『で?』ってなるだけかもしれないけど。」
「なに?」
「お見舞い行こうって言い出したのも、何か買ってってやろうって言ったのも、陽向なんだよ。」
え。
「さっきはアイツ、冷たくあしらってたけど、多分一番心配してたから。」
「こんなただの風邪で?」
「花園、今まで1回も休んだこと無かったじゃん。
だからじゃない?」
あーまぁ、無遅刻無欠席だったからな…。
「まぁ、それだけ。
じゃーな。」
「あ、うん。
ありがと。」
なんだよ陽向、かわいーとこあんじゃんっ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!