第24話

いいヤツ
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2019/01/04 07:25
「ありがと、助けてくれて。」


康輔が来なきゃ、あたし殺されてたかも…。


「いいよ、てかオレが悪いし。」


「そんなことないよ

それにしても、康輔にあんなにファンがいるとは…」


親衛隊とか怖いし…


「なー、オレもビックリ。」


「うざったいとか思わないの?」


「まぁー、そんなに。

さっきみたいなのがあるのはちょっと困るけど…。」


へぇ…


あたしだったらキャアキャア言われるの面倒だけどな…


ストレス溜まるかも…


「康輔はいいヤツだよな…」


「へっ?

なんだよ急に。」


康輔が照れたように頭をかく。


「いやー、今思ったから言っただけっ!」


康輔が照れるとあたしまで照れるじゃん。


「だって、ファンの女子達に優しいし、お見舞い来てくれるし…」


嘘ついてまで、あたしが責められないようにして、最後には自分が謝って…


ただのゲーム好きじゃなくて、康輔はいいヤツだ。


「昨日も、お礼なのに、あたしの好きな店選んでくれたし…」


陽向はいつもからかってくるけど、康輔はいつも優しくしてくれる。


「それに今もあたしが困ってんの助けてくれたし。」


あたしがそう言うと、康輔は少し焦ったように口を開いた。


「それは…あなただったから…」


康輔はなにか決心したようにギュッと拳に力を入れた。


「あなたっ」


「いーやつだよなー、康輔はっ」


康輔が名前を呼ぶと同時に、空を仰ぎながら何気なく言う。


「あのさあなた、オレ…」


「ほんと、いい友達持ったよ。」


あたしは康輔が“あの言葉”を言う前に強引に遮った。


「…おう…」


康輔は戸惑いの表情を見せながら首に手をやる。


…ごめん、康輔。


あたしは…本当は鈍くなんかないんだ。


康輔が今あたしに何を言おうとしたのか。


思い違いだったとしても、あたしは知ってるんだ。


みんな持ってるこの感情の名前を。


だけど、知らないフリをしていたいんだ。

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