『放課後、校舎裏に来てください。』
そう書いた手紙を、“Aくん”の机に入れて置いた。
あの頃のあたしは、今と全然違っていた。
真逆だった。
フリフリのスカートなんて大好きだった。
学校に行く時はもちろん、休日はどこにも出かけないのにスカート履いて、ジャージなんて履きたくもなかった。
髪の毛は下ろせば腰まであるロングで、いつもツインテール。
マニキュアとかリップとか、お母さんの真似して沢山集めて、マニキュアなんて学校には付けていけないくせに土曜日に塗って日曜日に落としてを繰り返してた。
男言葉なんて絶対使わないし、やばいとかマジとか、そーゆー言葉も使わなかった。
今の私とは似ても似つかない。
それがなぜ、スカート嫌い、ショートの髪、男らしくなってしまったのか。
あたしが変わっちゃったのは、この時。
「はーなーぞーのー。」
あたしが後ろを振り向くと、Aくんが立っている。
「Aくんっ…!」
来てくれた…!
よかった…!
もう既に嬉しい。
「あ、あのねっ…」
ドキドキ。
ギューって胸が痛いよ。
目を見れない。
緊張してるんだ、あたし。
頑張れっ、大丈夫。
心の中でつぶやく。
「あたしっ…Aくんのことが好きっ…!」
言っちゃった!
言えちゃった!
ずっと伝えようと思ってた。
良かった、言えた。
恥ずかしくて、Aくんの顔なんて見れない。
どんな顔、してるのかな…?
何も言ってくれない。
困ってる?
それとも…?
チラッとAくんを見上げる。
「…え、花園、オレのこと好きなの?」
改めて聞かれると…照れるよぉ…
「う、うんっ…」
「そーなんだ」
ニコッと笑うAくん。
「だから、あの…付き合ってくれない、かな?」
そこまで言って告白っ。
「あー」
表情を崩さないままAくんが言う。
「うん。」
ドキッ。
「へっ!?」
今…
うんって…!?
「Aくんも…あたしのこと…好きなの…?」
「うん、好きだよ。」
あたしはその言葉に舞い上がった。
Aくんにからかわれてるとも知らずに。
「…なんて、言うと思った?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。