「ふぅ…」
自分の席についてカバンを置く。
なんか、既に疲れた…
あたしは机に突っ伏す。
あー…
このまま寝れる。
まじ寝みぃ〜…
「朝から寝てんのかよ
お疲れですかー?」
右耳に入ってくる声。
「え?
あ…まぁ…今日早く起きちゃって…」
横を見ると陽向もちょうど登校してきたところだった。
どくん。
心臓が大きく跳ねる。
「…ー」
あぁ。
「…ー」
胸が締め付けられるのは。
泣きそうになるのは。
なんで…?
あたしは…
分かってた。
もうとっくに…。
…認めたくない。
でももう…
無理だ。
抑えられない。
この感情の名を…あたしは知ってる。
これは…
恋だ。
前にも…
同じように…。
…思い出したくない。
捨てたい記憶。
あたしには、好きなやつ…がいた。
そいつの名前は思い出したくもない。
まぁ、ここでは“Aくん”とでもしとこう。
名前を言えば…嫌な記憶が蘇ってくる。
こんな記憶無くなってくれればいいのに、と思う。
何かの拍子にふと思い出してしまうと、体に錘がのしかかったみたいに動けなくなる。
頭の中に流れる一連の出来事のストーリーを、止めたいのに止められなくて、最後にはいつも涙が流れてきて、虚しさ、悲しみ、屈辱、といった感情がいっぺんに押し寄せてくる。
あぁ、また。
あれは、小学六年生の頃。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。