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第1話

私の幼馴染の優しさ
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2018/10/22 12:47
大会まで残り数ヶ月、私が所属しているバレー部は明るくて仲が良い…という訳でもない。
私が中学3年になってからバレー部は大会に向けて一生懸命練習している。
後輩や友達と話すことすらない…。

セッターとしてスパイク練習の私は、
「ちょっと、ステップ遅い!」
「肘もっと上げて!」
こんな感じに怒っているのです。

「空先輩って怖くない?」
「確かに、笑わないしね」
「ロボットみたい」

聞こえてます。バッチリ聞こえてます。

名字は言えないけど… 空 バレー部のセッターです。
小さい頃から母にバレー部を教わり毎日馬鹿みたいにバレーしかしなかった。
勉強はそこそこいい方だし 普通に学校生活を過ごしていた。

「「お疲れ様でした!!!」」

外が暗くなる頃 部活は終わった。

「空ー!!!」
キーンと耳が痛くなった。
「っ!…桃か 耳元で叫ぶのやめてくれない?」
「だって、ずっと名前呼んだのに気づいてくれないんだもん!」

「外見はぴちぴちの14歳でも中身はおばあちゃんだから」
「うわ、それでバレーやってるとか」
ふふ、と私と桃は笑う。

私だって笑えるから…。

ふっと窓から外を見てみると、サッカー部が片付けをやっていた。
その中に幼馴染の陸がいた。陸は優しく微笑みながら手を振ってくれる。
私は、手を振り返した。

「なに〜?また旦那様?」
桃がニヤニヤと私を見てくる。
「違うよ、ただの幼馴染。」
「幼馴染から恋に変わるってないの?」
「ない」
即答して早足で校舎を出た。


でも、…


ざぁ…ざぁ…


雨が急に降ってきた。

「最悪…」
「濡れちゃうね…」
ポカーンと私達は空を見上げた。
このまま走って帰れば濡れるに決まってる。

「急げー!風邪引くぞー!」
どこからか声が聞こえた。
サッカー部だ。
練習着から制服になっている。
その中に傘をさしてる陸を見つけた。
その中に入っているのが


「海…」


私が1番嫌いな人 海だった。
小学校一緒なんだけどちゃんと喋った事ない。
私が一方的に嫌っている。

「あ、空ちゃん…」

陸が気づいて私の名前を呼ぶ。
海も私を見た。

目があうと私はすぐに逸らした。

海は、傘からでて
「じゃあ陸!明日の朝練遅れんなよ!」
と私の横を走り去った。

やっぱ 嫌いだ。


「え、えっと…陸くん 空を傘入れてあげなよ! 家近いでしょ!」
「桃は?」
「私は親に迎えに来てもらう!」
大丈夫かな…。

「僕はいいけど、…」
陸は私に傘をさしだす。

陸は優しいな…。

私は桃に「バイバイ」と言い
陸の傘に入り歩いて帰った。




校舎の中で濡れながら私達を見つめる彼に気づかず私は陸と一緒に帰った。






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