街
あ、今日ってお祭りじゃん
この子はよく、そんな感じの話をする
前に話してくれたこと。
それは、あなたの過去の話だ
彼女は、義理の父親からひどい虐待を受けていた。
それも、周りには見えない場所。
たとえば額の横で髪で隠れる場所、胸周辺、足首近く
大人って汚い。あなたは大人が大嫌いだ
確かに、あなた自身も大人だが、そういう事じゃない
精神的に、もう限界だった。
そのとき助けてくれたのが、宏太だったのだ。
雨の日、あなたの家の前でびしょ濡れで泣いていたのを話しかけた
そして何も知らないただの泣き虫少女に言ったのだ
『一緒に、生きよう』
宏太が過去に何があったかあなたは知らない
あなたが過去に何があったか宏太は知らない
だからこそいいのだ。
たとえこれから真実を告げようと
今信じあえることができるのならば
今笑顔でいることができるのならば
それができれば、人はなんだってできると信じているから
それは、笑顔で横を通る家族。
仲がよろしいことで。
でもそれは、孤児にとっては苦しい
親がいないから。
誰でもいい。
私と宏太、そして孤児院にいる人たちを救ってください
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!