前の話
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雨が傘を勢いよく叩く
本当に強くて傘が破けるんじゃないかと心配になる
雨が降るのは天気予報でいってたから傘は持ってたんだけどこんなに酷いとはおもわなかったな
雨の日は憂鬱…だって濡れるし花も散る
ほんと、最悪
雨の音にまじって誰かの声が聞こえた
かすれて今にも消えてしまいそうな声
でも、周りを見ても誰もいないのだ
今度はハッキリ聞こえた
声の場所も
その声の主も
その子はぐったりして電柱に背中をつけていた
心配になってそう聞くとその子はゆっくりと頭をあげた
その子はまたそう言った
よくみると、所々アザがあった
虐待…?
虐待と思った私はその子にそう聞いた
するとその子は頭を縦にふり返事をした
それが私とその子との生活の始まりだった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!