「……蝶羽?」
『っ……』
『轟くん……』
轟「!…なんで泣いてるんだ」
『あはっ、私極度の花粉症でさぁ……!』
轟「……そうか」
納得するんだ。
『轟くんは何してるの?』
轟「母さんのお見舞いに行ってきたところだ」
『お母さん入院してるの?』
轟「あぁ……」
どこか少し寂しそうな表情が一瞬見えた。
でもまたすぐにいつもの冷静な顔つきに戻ってこっちを見た。
轟「蝶羽、今から暇か」
『え?』
轟「いただきます」
『い、いただきます……』
暇かって聞いたのはそういうことかぁ……。
蕎麦屋に連れてこられるとは、
轟くんは本当に読めない。
『轟くん美味しそうに食べるね。蕎麦好きなの?』
轟「あぁ好きだ」
『ぅえっ……//』
なんか告白された気分←全然違う
轟「蕎麦嫌いだったか……?」
『えっ!?全然!嫌いじゃないよ!』
轟「ならいいんだが。ずっと食べないから嫌いなのかなって思って……」
『ううん。いただきますっ!…………ん、!?美味しい!』
轟「ここの蕎麦オススメだ」
『あっ、そうなんだ』
「ここの」ってことはお店巡りみたいなしてるのかな。
本当に蕎麦好きなんだな。
普段食べないから久しぶりに食べた気がする。
轟「何か悩みがあるのか」
『え……?』
轟「勘違いだったらわりぃ……」
『いや、』
あの轟くんに花粉症なんて嘘はもってのほか
全然通用してなかった。
『体育祭も終わって、目標だった表彰台にも乗れて、オールマイトからも有難い言葉をもらったのに報告できなくて……少し寂しくて。』
轟「そうだったのか。」
『でも轟くんとこうやって今、蕎麦食べることも出来てるし、話まで聞いてもらって満足だよっ!』
轟「!……それなら良かった」
『轟くんのお母さんは今入院してるの?』
轟「あぁ。久しぶりにお見舞い行ってきた」
久しぶり……? ってなんだろ。
まぁ体育祭で忙しかったし、ってことかな。
『会えて良かったね』
轟「……あぁ、そうだな」
『?』
エンデヴァーの話をしてた時の目とは裏腹にどこか悲しげな目で……私も知っているようなその切なさに胸を締め付けた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。