ベッドの上で倒れるように眠っている彼女
毛布も掛けずに……あなたにしては珍しい
近付いて顔を見てみると、目の回りが腫れていた
あーあ、……泣かせてしまった…俺のせいで。
あなたの手を握り、呟いた声は誰にも届かない
『なーくんじゃなきゃだめなの』
『なーくん大好きだよ』
『なーくんがいいの、他の人じゃだめ』
あなた相手が俺で良いのか迷うと、あなたは必ず『なーくんがいい』と言ってくれた。
なのに
俺を必要としてくれている人を泣かせてしまった。
自分の不甲斐なさに思わず涙が零れそうだった
でも…俺が泣く理由なんてない。
この人を、あなたを幸せにしなきゃいけない
一緒に人生歩んでいく人に笑顔でいてもらうために
幸せにするために…って。
口先だけだって言われても否めないのが現状
勿論、あなたは俺の人生の中で大事な大きな存在
だけど、現状は『あなた<仕事』になっている
ようやくこの前大きな物事が落ち着いて、あなたと一緒にゆっくり過ごせると思っていたのに。
トラブルやら、新たな企画、これからのこと。
俺は社長として何かあったら責任をとる責務がある
トラブル対応や、企画考案などのミーティングには俺が居なくてはならない。
この前の電話も…会社で色々あり、緊急だった
あなたとの2人きりの大事な時間
その時間を引き裂くように鳴り響いたコール音
あなたとの時間、大切だ。勿論大切な時間。
だけど、軽いトラブルかあったとのことで俺はそれを対応して、処理する義務がある。
俺は仕事を優先したことがあっていたのだろうか
現状、大好きな彼女を泣かせた、俺が泣かせた。
不甲斐なさから握っていた手に力が入ってしまう
君が起きたら伝えよう
『ごめん』と、『幸せにする』と。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!