・〜ノエ〜・
オレはクロエさんの肩に手を回してオレを見つめている黒い影に怒鳴った
ノエ:
《ネーニア…!》
《彼女から離れろ!!》
《今すぐに!!》
クロエ&ジャン=ジャック:
〔…!?〕
クロエ:
〔ネーニア…?あら…あなたそんな名前だったの?〕
ネーニア:
【…勝手にそう呼ばれているだけ】
クロエ:
〔へぇ…そうなの〕
平然と会話をしている二人を見て唖然とする。
クロエ:
〔そんなことより ほら…ノエ〕
〔ごはんが来たわよ〕
ギギ…と音を立て、料理を運んできた自動人形が俺の横を通り過ぎた。
だが、今はそんなことを気にしていられる状況ではなかった。
オレは、クロエさんとジャン=ジャック、そしてネーニアが仲睦まじ気にしている様子を見て困惑する。
(これは)
(なんだ?)
(そいつは…)
(それは)
(アメリアさんを)
(そして)
(ルイを────)
ノエ:
〔──っ…〕
クロエ:
〔…どうしたの?早く席に着いてちょうだい〕
ノエ:
〔クロエさん〕
クロエ:
〔……?〕
ノエ:
〔森の中に現れた大きな獣…あれの正体は貴女なんですか?〕
〔“ベート”の正体は…呪持ちのヴァンピールなのではという話を聞きました〕
〔だとしたら…貴女の真名を奪ったのはそのネーニアのはずで……〕
〔なのにどうして〕
〔貴女はそいつとそんな風に笑っていられるんですか……?〕
クロエさんはオレの問いかけに平然とした様子で、スープを口に運びながら応える。
クロエ:
〔私が望んだことだから〕
ノエ:
〔……〕
〔は?〕
クロエ:
〔私は〕
〔自分の“願い”と引き換えに〕
〔自らの意志で呪持ちになったのよ〕
ノエ:
〈─────ッッッ〉
〔ね〕
〔がい…?〕
オレが呟くと目の前にネーニアが近付いてきた。
ネーニア:
【そうだよ】
【欲しくて欲しくてたまらない真名でも】
【クロエのように強い力を持ったヴァンピール相手だとね】
【無理矢理持っていくのは難しいの】
【だからお願いするの】
【「あなたの願いを叶えてあげたらその真名を私にくれる?」……って】
ノエ:
【………っ】
ネーニア:
【あなたもそうなのよノエ】
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!