クロエの父:
〚いいか クロエ〛
〚私の許可無くこの城の外に出てはいけないよ〛
クロエ:
〚はい…〛
クロエの父:
〚クロエ〛
〚外に出る時は必ず従者を付けフードで顔を隠すこと〛
クロエ:
〚はい…〛
クロエの父:
〚おまえがヴァンピールであることは決して外の人間に知られてはならないんだ〛
クロエ:
〚はい…〛
〚お父様…〛
──私がヴァンピールとして目覚めたのは4つの頃
──16世紀も後半 “混沌”が残した傷跡もようやく薄れ始めた
──そんな時だったという
──あの時代には「そういうこと」がよくあった
──“バベル”を生き延びた者が知らぬ間にその存在を書き換えられていたり
──人間の間に生まれた子が歩くことを覚えるのと同じように
──ある日突然両の眼を紅く染めるのだ
──恐らくは
──“バベル”のせいで世界式そのものが不安定な状態となり
──その影響がこちら側にも現れたのではないかと思う
クロエの父:
〚大丈夫……大丈夫だクロエ〛
〚私がおまえを救ってやる〛
〚必ずおまえを…人間に戻してやるからな……!〛
クロエ:
〚はい………お父様〛
──11を過ぎた頃 この体は成長を止めた
──クロエ・ダプシェは表向きには病死したことにされ
──私はダプシェ侯爵家の“隠されたヴァンピール”になった
──父は“バベル”を引き起こしたとされるパラケルススの情報をかき集め
──名だたる魔術師・錬金術師を山の奥深くの城に集め 世界式の研究を始めた
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クロエの父:
〚大丈夫だ クロエ……〛
〚おまえを………〛
〚人間…に───…〛
クロエ:
〚はい……お父様…〛
お父様はそのまま息を引き取った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。