ピロリン♪
スマホの着信音が鳴った。
『新着メール:1件』
開いてみて、びっくりした。
どうして。
実は彼女に、メールに関して
嘘をついていた。
彼女と現実で話すことに対しても
若干の違和感があったのに、
ましてやメールで話すことなんてできない。
そう思って、機種変更を口実にして、
「ひまりちゃんにメールが送れなくなった」
「届きもしない」
と嘘をついたのだ。
送っても、送られてもいないのに。
それが、お互いのためになると思ったから。
そうですか。
下を向いて呟いたあの子の顔が、浮かんできて。
卑怯者。臆病者。
自分をののしる言葉ならいくらでも出てくるのに、いつのまにか逃げている自分に気づくのだ。
ひまりちゃんが話しかけてこないから。
ひまりちゃんの笑いが、わたしの前だとぎこちないから。
ひまりちゃんが––––––。
––––––結局は自分勝手、だよね。
心の中で呟くと、
罪悪感がこみ上げてきた。
いやしかし、今は。
送れない、届かないと言ったはずなのに、なぜ送ってきたのだろう。
まさか、嘘がバレていた?
まさか……。
振り払って、メールを開く。
差出人:九条ひまり
宛先:神山あなた
件名:Re:届いてませんよね
本文:
あの、届いてませんよね––––––。
メールはそう、始まっていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。