💚「……お嬢様、どうかなさいましたか?」
「え?」
💚「私の顔をじーっと見て…。どこか痛んだりしますか?」
「ううん!そうじゃないの!……なんだかまだ魔法かかってるみたいで、頭がぼーっとするって言うか…。」
💚「左様でございますか。安心いたしました。…魔法のせいもありますが、多分吸血のせいもありますね。」
「吸血のせい?」
💚「吸血する側は血を飲むことで、体力やら魔力やらは回復しますが、飲まれる側は逆に体力を消耗してしまいます。……少々がっつき過ぎてしまいました。すみません…。」
「ううん!それは全然平気!」
💚「それにしても……」
顎に手を当ててじっくり何かを考え込むような仕草をするうらたくん。
そんな姿も様になるなぁ……なんて呑気に思ってしまった。
💚「お嬢様の血はなんだか他の人間とは味が違う」
「え!お、美味しくなかったですか……」
💚「いやいや!そういう訳ではなくてですね…。味になんだか複雑味が全く無いと言いますか。」
「複雑味…?」
💚「一人一人血の味は多少違います。甘みが強い血、旨味、塩味、ある人間の血では酸っぱかったこともあります。でもどの血も、旨味だけの血。酸味だけの血。なんてものに出会ったことがない。しかしお嬢様は、複雑な味はしなくてスっと体に入ってくるような味……」
「……どんな味だったの?」
💚「それがなかなか形容しがたい…… 出会ったことの無いような味でした。もちろんだいすきなお嬢様の血ですからとびきり美味しいんですけどね?」
そう言って私の頭をそっと撫でてくれるうらたくん。
💚「お嬢様は本当に不思議な人だ。……わがままを聞いて下さりありがとうございました。まだお体も万全では無いのに……。」
「ううん、うらたくんが喜んでくれるなら私それだけで嬉しいから」
💚「………お嬢様、発言には気をつけないとですよ?理性のキャパが少ないさかたにそれを言ったら、パクッと食べられてしまいます。」
がおーっと狼のようなポーズをしたうらたくん。
ここの地下に初めて来た時、さかたくんがしたマネと同じだった。
💚「お嬢様は体をゆっくり休めてください。…もしまた何かあれば連絡を。すぐ駆けつけますから。」
そう言うと一瞬迷うように視線をキョロキョロさせたうらたくん。
「……どうかした?」
私がそう聞くと、少し顔を赤くして、目元がいつもよりもキリッとしたうらたくんがそっと私に顔を近づけ、
おでこにそっとキスをした。
💚「……だいすきです」
そう言って部屋を逃げてしまうように部屋から出て行ったうらたくん。
「………へ、」
体が意味わからないほど暑くなったのは、部屋に1人になって3秒後の事だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。