💚「それがあの本に書いてあって恥ずかしくなってしまったんですか?」
うらたくんは眉を少し下げて、優しく笑った。
それから私の隣に優しく腰かけた。
「う、うん」
💚「お嬢様はこういったことに不慣れですから無理もないですね。……残念ながら契約者様と吸血鬼が口付けをしてから吸血する。なんて流れは何百年も昔の話です。」
「え!」
💚「吸血鬼にとって効率が悪すぎることから、自身が進化し続けて口付けは不必要になりました。その代わり今は吸血する際、ある魔法をかけさせて貰います。」
「どんな魔法なの?」
💚「体温を上げてすこーしだけ頭がふわふわするような魔法です」
「えぇ、」
💚「危険なものじゃありませんよ。要はキスをしている時みたいに体が少しほてり、意識がこちらに向けばいいんです。ご所望でしたら魔法はかけずにキスで吸血を始めることも出来ますよ?」
「い、いや!危なくないなら魔法でいいです!キスだとその、ハードルが高いと言いますか……」
💚「ふふ、言うと思いました。まぁ、そういうことなのでお嬢様ご安心ください。」
優しく笑いそっと私の頭を1度だけ撫でた。大きな手の重みがちょうど良くてなんだか安心した。
「みんな、吸血とかしなくて平気なの?」
💚「今は食品で鉄分を補給できますからね。不足することはあまりないです。でも、欲しくなる時はあります。」
「足りなくなるのと、欲しくなるのは別なの?」
💚「人間で言う好物的な感覚ですね。大してお腹が空いていなくても誰かが、自分の好きなものを食べてたら自分も食べたくなる。今だいすきなお嬢様が目の前にいて、こんなに無防備な姿を見たら あぁ、かわいいな。肩に吸い付いてみたいな。なんて思います。」
「……うらたくんは、今私の血を飲みたい…?」
💚「お嬢様が嫌がるくらいだったらこんなこと我慢します。……でも、お嬢様の目を見てたらそんなことできるかわからなくなってきました…。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!