彼から放たれた言葉は、まるで刃物のような形をしているみたいだった。
ざくりと刺さり、そこから血が溢れるような気がした。
💛「…あなたちゃんと契約を結んで、死なずに居れるのはここにいる4人の吸血鬼のうち、 "1人だけ"ってこと。……そんなんで、俺たちの間で争いが起こらないはずがないやろ。
いつかあなたちゃんを巡って、殺し合いをする。」
「……待って、 みんなは私を愛し殺すんじゃないの?」
💛「もちろんそのつもりやで。……でも実際愛し殺すのはあなたちゃんと契約を結べたたった1人の吸血鬼だけ。」
「ど、どうして……そんなに生に固執するの、?私を殺したあと…… ほかの3人を殺したあと。たった1人だけが生き残っても、その誰かは莫大な寿命をそれでも欲しがるの、?」
💛「……吸血鬼やからや。」
ひゅんと、喉がなった。
冷たく言い放たれたその言葉に全身が凍りついた。
鋭く、こわい。だけどどこか物悲しさを帯びたセンラくんの視線は私のことを捕らえて離さない。
まるで肉食動物に捕まったうさぎ。
身動きさえ取れない。
💛「……俺らは、吸血鬼なんだよ。どんなに人間のフリしたって俺は、……人間になんかなりきれないんだよ。」
「……センラ、くん」
思わず立ち上がり向かい側に座っているセンラくんに抱きついてしまう。
私の全身で彼を確かめないと。……じゃないと彼が消えてしまいそうな気がしたから。
💛「…お嬢さ、」
「そんな悲しいこと言わないで。」
💛「……え、」
「そんな事言わないでよ。……私は、みんなと居れるなら。4人と一緒に居れるその環境さえあればなんでもいい。
…私の手足が無くなろうとも、どんな酷い殺され方をしても、
心さえあればみんななことが "すき" だって言う気持ちはあり続ける。
それさえあれば私は世界一の幸せ者だよ。
すきな人に愛し殺されるんだもん。それが例え人間でも吸血鬼でも、そんなのどうでもいい。私はお嬢様なんでしょ?だったら執事らしく私の言うことを聞いてよ。
人間になりきる。吸血鬼としての性を忘れる。そんなに自分に抗おうとしなくていい。
ていうかするな。
吸血鬼として生まれたことに後悔しないで。私はどんなみんなもすきなんだから……。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!