そういうとうらたくんは私の目を覆っていた大きな手を離した。
ゆっくりと目を開けると、少し熱っぽい目をしたうらたくんが私に優しく笑いかけていた。
💚「…美味しそうな顔してる。体、熱い?」
「……うん、熱くってぼーっとする……」
💚「そっか。じゃあ、食べ頃かな?」
うらたくんは私の膝裏に腕を回すと、私の背中を支えながら立ち上がり、私をお姫様抱っこして優しくベットに下ろした。
私に覆いかぶさり優しく影を落とすうらたくん。
熱っぽいその目が私を酔わせた。
動作一つ一つが、甘く、重たく、大人で、私がうらたくんに夢中になるには十分すぎるほどの、色っぽさだった。
💚「……いただきます」
息を吸う音が耳に直接かかった。その直後、プツリと肌に歯が当たり、体の中に侵入してくるような音がした。
ふわふわとしている頭でもこの瞬間だけは、あの時のことを思い出し体を強ばらせた。
だけど確実に歯は私の中に入ってきているはずなのに、痛みなどは全く感じなかった。
ただ、どくどくとそこが呼吸しているみたいに波打って、熱くなる体と、うらたくんの吐息が私に吸血行動というものを体全体にしら知らしめるように伝わってきた。
💚「……いたくない?」
小さな声でそうつぶやいたうらたくん。理性はあるはずなのになんだかいつもと顔つきが違う。
顔が赤くて、目はなんだか眠そうにしている。まるでお酒に酔っているみたいだ。
「……うん、」
つられて私もとろんとしてしまう。
うらたくんはふふっと控えめに笑うと、"可愛い"と一言だけつぶやいて、また私の肩に顔をうずめた。
ごくごくと喉を鳴らして飲んでいるのが分かる。
💚「…ごちそうさま」
そう言ってうらたくんは私から離れた。
一瞬見えた牙には血が付いていて、なんだかゾクッとした。
まだ冴えない頭でうらたくんのことをぼーっと見つめる。……というより見とれてしまっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!