紗和が眠ってしまうと、私と織川先生は屋上に向かった。その間に少し話をする。
私と彼女は屋上に出てベンチに腰かけた。少し肌寒い風の吹く気持ちのいい空の下…。
私はぽつりぽつりと話し始めた。
私は椅子を立ち彼女の前に立った。そしてその顔を見る。── " あぁ、やっぱりそうだ " ──
私と涼は、似ている。
恐らく男っぽいその性格も、そっくりだろう。
私と涼は2人で屋上を出た。
病室に戻ると紗和が丁度目を覚まし私を見るとにっこり微笑んで手を伸ばして来る。私は紗和に近寄ってその小さな体を思い切り抱き締めた。
私の腕の中で眩しい笑顔を放ってくれる可愛い娘、いつか涼にもこの子の本当の良さを知って欲しいと思った。そして紗和が涼と共に生きたいと願うのなら、応援してあげたい。
紗和の僅かに頬を染める嬉しそうな顔、そんな顔をさせてやれるのは、涼だけ。
涼が紗和の頭を撫でると嬉しそうな顔をする。紗和に好きな人が出来た、それだけでも嬉しいのにその人が更に紗和を分かろうとしてくれている。こんなに嬉しい事はない。
私が行こうとすると、涼は私の腕を、紗和は私の服を掴んできた。思わず笑いが込み上げる。
小さくて可愛い恋する娘と
不器用だけど優しい先生…
私はずっとこの2人を傍で見守りたいと思った。紗和を知りたいのならどんな事でも教えてあげたい。それで紗和を好きになってくれたらどんなに幸せか…。
紗和の傍に行くと私を壁にして隠れてしまう。そんな娘を見て涼は少し胸を押えながらも紗和の可愛さに気付いてくれたみたい。
私は今日というこの日が、1番幸せだと思った。大好きな娘と娘を理解しようとする私の友達、こんな日がずっと続いてくれますように。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。