第6話

*** by.日和
158
2019/11/16 14:19
紗和が眠ってしまうと、私と織川先生は屋上に向かった。その間に少し話をする。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
織川先生、紗和が告白をしたそうで…
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
え。あ、はい…。
私は彼女を教えては居ないんですが、遠目から見て好きになったと…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
そうですか。先生の目から見て
あの子はどう見えましたか?
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
…そう、ですね。心臓病を患っていると聞きました。20歳まで生きられないって事も…。それなのにとても前向きで明るい印象を持ちましたよ。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
紗和は明るくて元気でヒマワリみたいな子なんですよ。いつもあの子を見守る私の傍を離れなくて、いつも私を見てるんです。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
それはまるでヒマワリと太陽のようですね
紗和のお母さん
紗和のお母さん
えぇ。…少し、昔の話をしても?
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
えぇ、構いませんよ?
私と彼女は屋上に出てベンチに腰かけた。少し肌寒い風の吹く気持ちのいい空の下…。
私はぽつりぽつりと話し始めた。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
紗和と私は本当の親子ではないんです。彼女は養子で私が引き取りました。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
養子ですか…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
えぇ。私福祉施設で働いていて、その時訪問した児童保護施設で初めて紗和を見掛けた時、本当に運命を感じました。私を見てにっこり笑ってくれたんですよ。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あまりにも可愛くて彼女の事を施設の人に聞きました。そうして最終的に分かったのは、彼女は育児放棄でアパート内に衰弱した状態でいた所を保護された子であるという事でした。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
育児放棄ですか…。何とも嘆かわしい状態ですね…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
えぇ、本当にそう思います。施設の人が保護した時紗和は4歳だったそうです。直ぐに病院に運んで検査をした結果、持病で心臓病を持っている事が分かったらしくて…発見当時あの子は本当にいつ死んでもおかしくない状態だったそうです
紗和のお母さん
紗和のお母さん
10歳まで、いや一年後にはもう死ぬかもしれない…そんな絶望的な状態の中、あの子は施設の方の愛情に包まれて育って…その2年後に私と出会ったんです。それを聞いた時私どうしてもあの子を引き取りたかった…。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
それは運命的なものを感じた、から?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
それもあります。…実は私も、親に育児放棄されて施設で育ったんです。だから何だか放っておけなくて…。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
そうだったんですか…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
紗和を引き取ってからは本当に毎日が楽しくて、私の生きる希望になりました。小さい時は病院で入院する回数も多くて、体調を崩せば学校から電話が来て迎えに行ったり…その度にあの子私に謝るんです…泣きながら…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ごめんなさいって、悪い子でごめんなさいって…。あの子は謝る事しか知らなかった…今みたいに笑う事もしませんでした。ただ毎日怯えるんです。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
だから私、あの子にたくさんの愛が伝わるようにスキンシップは欠かしません。小さな事でも褒めてあげるし、私を求めるなら直ぐに飛んでいきました。…そしてあの子に教えた事もあります。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ごめんなさい、じゃなくて。ありがとうって言って欲しいって。紗和は悪い事なんてひとつもしてないんですよ?心臓病だってあの子が望んだ訳でも人を困らせる為に患った訳でもない。だから紗和は何も悪くないんだよって…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
そんな小さな積み重ねを毎日毎日続けて…。体調を崩すのは仕方の無い事です。それでもあの子は少しずつ前を向いて生きていけるようになりました…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
……すみません、長々と。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
いいえ。お構いなく。でも貴女の彼女に対する愛情がすごく伝わるお話でした。貴女が居たから彼女は今を生きれているって…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
そうだと自負しています。あの子に父親は居ないし祖父母も居ません。お友達も多分あまり居ないかと…。それでも幸せだと思ってくれているのなら…。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
きっと思っていますよ。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
そうだといいですが。…すみませんね、あの子を少しでも分かってもらいたかったのでつい長話になりました。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
大丈夫ですよ。紗和さんの事を知れて良かったです。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ありがとうございます織川先生
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
いいえ。…そう言えば見たところまだ若いようですが?…お幾つですか?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
33歳ですよ
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
ッ!? …22歳でシングルマザーに?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
えぇ。驚きました?
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
は、はい…。私と同い年なのに…その決断力が凄いなと…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あら、織川先生も?
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
はい。私も33です…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
まぁ。紗和ったら年上が好きなのかしら
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
は、母親からすると…私は歳を取りすぎているかもしれませんね
紗和のお母さん
紗和のお母さん
何を言ってるんですか、私だって同い年なのに。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
い、いえ、その。恋愛対象として見たらの話ですから。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
まぁ、でも…紗和が好きになったのならきっと貴女は優しい素敵な人なんでしょうね?
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
そ、そんな事は…。確かに色んな生徒に慕われてはいるようですが…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
織川先生、下の名前は何でしたか?
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
涼、ですが?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
同い年ならお友達になりません?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
紗和が喜びます
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
い、良いんでしょうか…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
貴女は固く考え過ぎですよ。あの子が入院しても見舞う人なんて居なかったんです。紗和はきっと嬉しかったと思います…好きな人に来て貰えて…。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
……藍浦さん
紗和のお母さん
紗和のお母さん
日和、で構いませんよ。それと、同い年なら敬語は必要ない
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
…わかった、では日和と呼ぶよ
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あの子が貴女を好きになったのは…
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
………日和?
私は椅子を立ち彼女の前に立った。そしてその顔を見る。── " あぁ、やっぱりそうだ " ──
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
どうか、した?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
いや、なんでもない
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
…そうか
私と涼は、似ている。
恐らく男っぽいその性格も、そっくりだろう。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
病室に帰りましょう。紗和が目を覚ましているかも
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
そうだね
私と涼は2人で屋上を出た。
病室に戻ると紗和が丁度目を覚まし私を見るとにっこり微笑んで手を伸ばして来る。私は紗和に近寄ってその小さな体を思い切り抱き締めた。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ふふ、よく寝れた?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
寝れたよ♪
お母さん♪
紗和のお母さん
紗和のお母さん
良かったわね。ん~紗和~♪
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
えへへ♪
私の腕の中で眩しい笑顔を放ってくれる可愛い娘、いつか涼にもこの子の本当の良さを知って欲しいと思った。そして紗和が涼と共に生きたいと願うのなら、応援してあげたい。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
元気そうだな紗和
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
うん…!…ッへ?
せ、先生…私の事…。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
学校では無理だが、外でならいいかと思ってな?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
まぁまぁ。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
う、嬉しい~///(ぽっ)
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
…!(きゅん)
紗和のお母さん
紗和のお母さん
はぁ、可愛い…
紗和の僅かに頬を染める嬉しそうな顔、そんな顔をさせてやれるのは、涼だけ。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
な、何だか…胸が…
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
え!?先生!?大丈夫!?
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
だ、大丈夫。大丈夫。
心配するな
涼が紗和の頭を撫でると嬉しそうな顔をする。紗和に好きな人が出来た、それだけでも嬉しいのにその人が更に紗和を分かろうとしてくれている。こんなに嬉しい事はない。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ふふ、後は若い者同士で♪
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お、お母さん!?やだ!
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
日和、ちょっと
私が行こうとすると、涼は私の腕を、紗和は私の服を掴んできた。思わず笑いが込み上げる。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あははは!何なのよ2人とも!
紗和のお母さん
紗和のお母さん
普通に話せばいいじゃないの
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
う…ッ/// い、今は無理ィィ///
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
日和居てくれ頼むよ
ま、まだ紗和と2人は…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あはははは!しょうがないんだから
小さくて可愛い恋する娘と

不器用だけど優しい先生…

私はずっとこの2人を傍で見守りたいと思った。紗和を知りたいのならどんな事でも教えてあげたい。それで紗和を好きになってくれたらどんなに幸せか…。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お、お母さんこっち来て!
紗和のお母さん
紗和のお母さん
はいはい
紗和の傍に行くと私を壁にして隠れてしまう。そんな娘を見て涼は少し胸を押えながらも紗和の可愛さに気付いてくれたみたい。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
自慢の娘よ、可愛いでしょ涼
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
あ、あぁ…。
罪な可愛さだな、紗和は…。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
な、何言って…ッ///
紗和のお母さん
紗和のお母さん
良かったわね紗和。
涼は紗和に惚れるわよ~?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お、お母さんッ!!///(べし)
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あははは、痛い痛い♪
私は今日というこの日が、1番幸せだと思った。大好きな娘と娘を理解しようとする私の友達、こんな日がずっと続いてくれますように。

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