第8話

*** by.紗和
96
2019/11/29 17:03
〜♪〜♪〜(着信音)
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
ん……?
携帯の着信音が鳴っている。私は眠い目を擦りながら通話ボタンを押した。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
もしもしぃ?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
くす、紗和寝てたのね。起こしちゃったかな?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……!お母さん
紗和のお母さん
紗和のお母さん
そうよ。仕事が早く終わったの。だから今から帰るわね?大丈夫?泣いたりしてない?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
な、泣いてないよ!子供じゃないんだから。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あはは、ごめんごめん。
凉はいる?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
そういえば…織川先生居ない…。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
そっか、分かった。
紗和。織川先生居なくてもいい子にして待っておくのよ?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
はーい。分かった。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
いい子ね。それじゃ今から飛行機乗るから、着いたら電話するわね。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
うん!待ってるね。
電話が切れると私はベッドに仰向けになる。大好きなお母さんの声を聞いて少し安心したのかまた眠くなる。

─ がらり。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
…!織川先生どこ、に……?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……鈴木先生。
鈴木先生
鈴木先生
元気そうだね、紗和ちゃん。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……はい。
鈴木先生
鈴木先生
検査結果が出たよ。それを知らせようと思ってね。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
ほんと?私もう退院出来る?
鈴木先生
鈴木先生
何とも言えないな。あの人はどこだ?日和さんに似たあの人。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
織川先生のこと?
分かんない。起きたら居なかった。
鈴木先生
鈴木先生
そうか。それなら君だけにでも話しておくか。日和さんは出張何だろう?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
う、うん。せ、先生!私ひとりで聞くの怖いから。お母さん今日帰るの。だから明日でも…。
鈴木先生
鈴木先生
そう。なら明日にでも。ならこの紙を渡しておくよ、お母さんに見せるといい。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
分かった。
紙を受け取ると先生は出て行ってしまう。渡された紙に目を落とす。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……朝井奏斗あさいかなと…?


ドナー
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
…!?
私は思わず二度見した。

【ドナー】
体内の部位を提供してくれる人のこと。
死んだ後、その臓器が健康なら、移植手術が必要な人の所へ彼らの臓器は送られる。
その人の一部が新しい人生を開かせてくれる…。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
ドナー……


─ がらり。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
あぁ、紗和。起きてたんだね
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
せんせ……
私はさっきもらった紙をそっと手渡す。それを見た先生は顔色変えずに、涙を零す私を優しく撫でてくれた。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
ドナーが見つかって良かったな。
ドナーは生涯を生き抜けなかった者の思いも詰まっている。その者の代わりに、お前が生きるんだぞ?その人の分まで…
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……ん…うんッ…
この苦しみから開放される。その嬉しさと同時に申し訳ないような気持ちでいっぱいになる。
_織川涼@おりかわりょう_
織川涼おりかわりょう
ほら、泣くな…
先生が優しく私の頭を撫でてくれる…。


── 朝井奏斗あさいかなと ──






貴方に、一度でいいから……




会ってみたかった



ドナーになってくれて




ありがとう……

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