第4話

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2019/11/14 17:14
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
ん…
目を覚ますと、私はベッドの中に一人だった。隣に居たお母さんが居なくなっている。私はベッドから降りた。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お母さん…?
廊下を歩き、ナースステーションの傍を通る、休憩室を覗いてもお母さんの姿はない。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お仕事、かな…
私は不安で堪らないまま病室に戻ろうとする。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……あ、れ…?私……。
どこの部屋だっけ?
病室の番号を見ておらずそのまま出てきてしまったせいで迷子になってしまった。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
どうしよ……
部屋を一つ一つ覗く?でもそんな事をしても終わらなさそう。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
どーしよ…ッ…
看護師
看護師
あら、どうしたの?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
ぁ……
背の高い看護師さんに話し掛けられる。145㎝と背の低い私は目線を同じ高さにされ、どこか子供扱いを受けてる気分にもなる…。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お母さんが……
看護師
看護師
お母さん?
居なくなっちゃった?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……っ、起きたらいなくて…
看護師
看護師
そう…。大丈夫よ、一緒に
探しましょう?
そう言って私の頭を撫でてくれる看護師さん、私はその間にもキョロキョロと周りを見回した。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
あ、あの…
看護師
看護師
なぁに?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
その、私病室も分からなくて…
看護師
看護師
あら、大変!
そうだったの。名前は?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
あ、藍浦紗和…
看護師
看護師
藍浦さんね、ちょっと待ってて
そう言い残して看護師さんはナースステーションへ走って戻っていく。私はお母さんに会いたくて、その場をふらりと離れた。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お母さん……
トイレを覗いても、屋上を覗いても、お母さんはどこにも居ない。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……………
私は肩を落として屋上を出た。とぼとぼ歩いていると、何人かの看護師さん達が慌ただしく走り回っている。
入院患者
女の子が居なくなったって
入院患者
心臓病だってね?
どこかで倒れてたりして
入院患者
滅多な事言うもんじゃないよ
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
(……心臓病?女の子?)
すれ違う人達の話を聞いていると……。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
紗和!!
名前を呼ばれて後ろから抱き締められた。その匂いも温かさも知ってる。お母さんだ。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お、おかぁ、さ…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
紗和、良かった…良かった。
見つかって良かった。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
わ、私…ッ私…グスッ
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ごめんね、紗和。お母さんが居なくて探してたんだよね?ごめんね…不安にさせちゃったね。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
さ、病室に帰ろう?
鈴木先生もみんなが紗和を探してくれてたんだ
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
うぅ…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ほーら、泣かないの。
私はお母さんに抱きついてぐすぐす、と泣いていた。そんな私をお姫様抱っこで運んでくれる優しいお母さん…。
鈴木先生
鈴木先生
紗和ちゃん!
病室に入ると先生達が安堵の溜息を零していた。私はベッドに下ろされ、履いていた靴を脱がされてベッドに寝かされる。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
先生、ご迷惑お掛けしました。
紗和は私が居なくて探していたんです。
鈴木先生
鈴木先生
そうだったんだね。
でも無事で良かった。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
えぇ。私も見つけた時嬉しくて。
紗和は泣いてましたけどね。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お母さん…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ん、もう大丈夫。
どこにも行かないよ。
不安がる私を優しく撫でてくれて、私はその手を掴むとぎゅ、としがみつく。あんなに不安な思いはしたくなかった。
鈴木先生
鈴木先生
紗和ちゃんは本当にお母さんが
大好きなんだね
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
大好きだよ?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ふふ。自慢の子です。
鈴木先生
鈴木先生
日和ひよりさんも親馬鹿が
過ぎるくらいですからね?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
あら先生ったら
そんな会話をする2人を見ながら私はお母さんの手に擦り寄る。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ねえ鈴木先生。
私、紗和が退院するまで病室に泊まりたいんですけど…いいでしょうか?
鈴木先生
鈴木先生
本来は一人で入院して欲しいんですが…
紗和のお母さん
紗和のお母さん
分かっています。…でも…。この子を不安にさせたくないし…。
鈴木先生
鈴木先生
日和さん、紗和ちゃんなら大丈夫ですよ。病院へは朝早く来て、ギリギリまで病室に居てあげればいいと思います。
鈴木先生
鈴木先生
紗和ちゃんだって高校生ですから
鈴木先生
鈴木先生
一人で大丈夫だろ?
鈴木先生の問いかけに私は頷けなかった。

鈴木先生は怖い。
目の奥が笑ってなかったりするし、低い声で強制的に同意を得るような言い方をする。
鈴木先生
鈴木先生
紗和ちゃん?
鈴木先生
鈴木先生
大丈夫だよな?
紗和のお母さん
紗和のお母さん
…紗和
私は鈴木先生に逆らえない。私を診てくれているから。でも…と言葉に詰まる。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
先生?……お家帰りたい。
薬もちゃんと飲むし学校も休む…だから
鈴木先生
鈴木先生
何かあった時すぐに来れないだろ。
今は安静にして入院するのがいい。
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
………ッ
紗和のお母さん
紗和のお母さん
…紗和。ね、頑張ろうよ。
お母さん毎日毎日病室に来るから
私はお母さんの手を握りながら涙を零しつつ頷くことしか出来なかった。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
ん、偉いね、紗和。
いい子
よしよしと撫でてくれる手が大好き…。でも、と私は布団に潜った。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
紗和…
鈴木先生
鈴木先生
日和さん、少し過保護過ぎますよ?可愛いからという理由でベタベタするのは子供の将来にも良くありません
鈴木先生
鈴木先生
ましてや紗和ちゃんは高校生。こんな大きな子供が母親恋しさに泣くのは異常です。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
異常ですって?先生。お言葉ですが、紗和は体が弱いんですよ。確かに過保護かもしれません。でもね!私はこの子が安心して生きられる手助けをしてるんですよ。
鈴木先生
鈴木先生
それがダメだと言ってるんです。何でも自分でやらせたり、時には強く叱るのも親の役目ですよ。こうやって甘えてると何も出来なくなって、そのまま死んじゃいますよ。
──バチンッ!
そんな乾いた音が部屋に響いた。
話を布団の中で聞いていた私は顔を少し出す。
紗和のお母さん
紗和のお母さん
鈴木先生、貴方は確かに腕は良いのかもしれませんけど、言葉の選び方にセンスを微塵も感じません。担当医を変えて頂きたいです。
鈴木先生
鈴木先生
それは出来ませんね。
紗和ちゃんの手術は県内で私しか出来ません。私がやらないと言えば紗和ちゃんは助かりませんよ?いいんですか?
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
……ッ先生そんなのずるい!
鈴木先生
鈴木先生
何がずるいんだ?私は君を──
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
お母さんと一緒に居たいって何で思ったら駄目なの!私はどうせ20歳まで生きられない!後3年とか4年しかないのに!!
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
だったら私の好きにさせてよ!
_藍浦紗和@あいうらさわ_
藍浦紗和あいうらさわ
鈴木先生なんて大っ嫌い!
鈴木先生
鈴木先生
……やれやれ困ったな。それじゃ嫌いな私は君の担当医から抜けるよ。他の先生じゃ君の手術は出来ないんだ。早死したくないなら謝った方がいいと思うけどね
……この先生は、最低な人だ。

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