昼休み。あなたは廉に指定された体育館裏にやってきた。
すると曲がり角の向こうに、廉と知らない女子が一緒にいるのが見える。
いけない事だと知りつつも、あなたは物陰に隠れて、二人の会話を盗み聞いた。
あなたは衝撃的な場面を目撃し、ゴクリと息を飲んだ。
廉が一体どんな返事をするのかとハラハラする。
廉に彼女がいるなんて、あなたは聞いたことがない。
もしかして自分の知らないうちに、誰かと付き合い初めてしまったの?・・・と悲しくなる。
だけどあなたの驚きは、まだそこで終わりではなかった。
・・・
思わず大きな声が出そうになって、あなたは慌てて両手で口をふさいだ。
廉くんの彼女の名前は春名あなた・・・・・・。
もしかしてあなたと同姓同名の、別の誰かだろうか?
廉に振られた女の子は、さばさばした表情で体育館裏を立ち去っていった。
あなたはといえば、廉の話の内容に動揺しまくりで、頭の中がぐるぐるしている。
気づけばいつの間にか廉がそばにやってきていて、あなたをきつくにらんでいる。
やっぱり廉が言ってた彼女とは、あなたのことらしい。
だけどあなたと廉は今まで一度もそんな関係になったことがないはずだ。
あなたの質問に、廉は一瞬口ごもった。
ここで『俺はお前が好きなんだよ!』と言えばハッピーエンドなのが、
ツンデレの廉がそんなこと言えるはずもない。
廉が適当に考えた理由に、あなたはコクコクとうなずいた。
危ない、危ない。一瞬廉くんが自分を・・・・・・?なんて、
ありえない期待をしてしまうところだった。
あなたは何だかくすぐったいような、それでいて胸がツンと痛くなるような、複雑な気持ちに
なった。
対する廉は自分のラブラブオーラがあなたにバレないよう、必死に俺様な演技を続けている。
今まであなたとのラブラブなシーンを一人で妄想してましたなんて、とてもじゃないけど
言えない。廉は内心冷や汗ダラダラだ。
廉はグッとあなたの体を引き寄せると、強引に肩を抱いた。
すると今まで以上に二人の体が密着し、はたから見たら本物の恋人同士のように見える。
けれど恋人同士の距離に慣れていない二人は一緒に歩くだけなのに、どこがぎこちない動きに
なってしまう。
廉に怒られてあなたはまたまた緊張した。
廉のためならばなんでもしてあげたいけど、彼女のふりなんてどうすればいいのか分からない。
そんな二人を、体育館近くの2階のベランダから、海人と美桜が呆れるように見つめていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。