第19話

こじれた初恋⑮
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2019/09/16 03:51
化学室では、すでに実験の準備が始まっていた。
白衣姿の廉を見て女子たちは、
女子生徒①
永瀬くん、白衣似合いすぎ〜♡
女子生徒②
あーあ、ペア組みたかったな〜
と、黄色い声を上げている。
春名(なまえ)
春名あなた
ごめんなさいすみませんっ。私なんかが廉くんとペアで・・・・・・っ
あなたはいつものように髪を握って、誰かに文句を言われているのではないかと
ビクビクしていた。
その隣に廉が座り、実験のやり方をまとめたプリントを差し出す。
永瀬廉
永瀬廉
ほら、要点マルしといたから見とけ
春名(なまえ)
春名あなた
あ、ありがと・・・・・・
あなたは感動した。グズな自分のために、わざわざプリントを作ってきてくれるなんて
廉くん優しい・・・・・・と
だけど安心したのも束の間、あなたはプリントに書かれた赤字に気づく。
『失敗したら許さない』
春名(なまえ)
春名あなた
ひっ・・・・・・!
永瀬廉
永瀬廉
ぷっ、くく・・・・・・
廉からのメッセージを見て一瞬で青ざめるあなた。 
そんなあなたを盗み見てこっそり笑う廉。
それはちょっとイタズラのようなものだったけれど、そのせいで
あなたは ゛絶対実験に失敗できない! ゛と、ますます緊張してしまうのだった。
そして授業が始まった。今日の実験内容は蒸留だ。
バーナーに火がつけられ、フラスコに入れた液体がぐつぐつと煮えたぎっている。
あなたはフラスコに液体を注ぎ足すために、大きめのビーカーを持ち上げた。
春名(なまえ)
春名あなた
・・・・・・し、失敗しないように・・・・・・しませんように・・・っ
けれど緊張し過ぎているせいで、ビーカーを持つ手がぶるぶると
不安定に震える。
永瀬廉
永瀬廉
ちょ、アレや、やっぱお前見てればいい
あなたを止めようとした矢先、ビーカーの中の液体がこぼれて、
バーナーの炎に引火した!
ボワッと大きな炎が立ち上り、あなたにおそいかかる!
春名(なまえ)
春名あなた
ひゃっ!
永瀬廉
永瀬廉
あなたっっ!
あなたをかばうために廉は大きく前に出て、液体の入っていた
ビーカーを床にたたき落とした。
━━━ガチャン!
ビーカーが割れると同時に悲鳴が上がり、教室の中は一瞬騒然となる。
だけどあなたにケガはなかった。なぜなら廉があなたを後ろから
抱きしめる形で、炎から守ってくれたから。
この時ばかりは廉も素に戻って、慌ててあなたに声をかける。
永瀬廉
永瀬廉
大丈夫か!?
春名(なまえ)
春名あなた
・・・・・・・・・・・・っ
廉に後ろから抱きしめられたあなたの心臓は、これ以上ないくらい
ドキドキしていた。
「大丈夫」と答えたいのにうまく声が出なくて、こくこくと無言で
うなずくことしかできない。
春名(なまえ)
春名あなた
れ、廉くん、手が・・・・・・っ
永瀬廉
永瀬廉
・・・・・・っ
でもドキドキできるのはそこまでだった。あなたを庇った廉の左手の甲が赤く腫れている。
あなたを庇ったせいで火傷したのだ!
廉はあなたの体を放すと近くの水道に向かい、
水で火傷した左手を冷やし始めた。
春名(なまえ)
春名あなた
・・・廉くん、ごめ・・・ごめんなさい・・・。
私のせいで・・・・・・っ
あなたは慌てて廉の後を追いかけて、泣きながら謝る。
永瀬廉
永瀬廉
いーから箒とチリトリ持ってこい
春名(なまえ)
春名あなた
・・・・・・は、はいっ
対する廉は平静を装って、あなたに割れたビーカーを
片付けるように指示を出す。あなたは命令に大人しく従った。
そしてあなたや他の生徒の視線がなくなったのを確認した廉は、
永瀬廉
永瀬廉
心)あつっ!  あっつーーっ!
と、こっそり火傷の痛さに悶絶するのだった。
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