無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第34話

彼女(仮)⑤
その後、二人はあなたの自宅に戻り、室内デートすることになった。

あなたはジュースとお菓子を持って部屋に戻った_が。
春名あなた
春名あなた
れ、廉くん…!?
なんと廉はシャツの前をはだけて、あなたのベッドに座っていた。

シャツの間から男らしい鎖骨や胸板が見え隠れしていて、あなたの顔は真っ赤になる。





























映りが悪い…

































永瀬廉
永瀬廉
来いよ。練習させてやる。ボタンのとめ方
春名あなた
春名あなた
でもジュース……
永瀬廉
永瀬廉
いいから来い
春名あなた
春名あなた
……
どうやら廉は、いつかのボタンのとめ方の特訓を再開するようだ。

強い口調で命令され、あなたはおずおずと従う。

持ってきたジュースを机の上に置き、ドギマギしつつ廉に近づくと、
ぐいっと手を引かれ、強引に廉の隣に座らされた。
永瀬廉
永瀬廉
付き合ってたらやるやろ、ふつー 
春名あなた
春名あなた
や、やるって…?
永瀬廉
永瀬廉
こんなことだよ
春名あなた
春名あなた



































__ドサッ!
次の瞬間、あなたは勢いよくベッドの上に押し倒された!

廉の表情は真剣そのものだ。
春名あなた
春名あなた
心)……れ、廉くん!?
永瀬廉
永瀬廉
大丈夫や。優しくするから
春名あなた
春名あなた
……っ
さすがに鈍いあなたでも、これから廉が自分に何をしようとしているのかすぐにわかった。

でもこんなことあなたは初体験で、体が勝手にガクガクと震えだしてしまう。
永瀬廉
永瀬廉
目、閉じろ
春名あなた
春名あなた
……っ
廉の顔がだんだん近づいてきて、あなたはきゅっと唇を噛んだ。

まるで目の前の廉がいきなり知らない人になってしまったようで、とても怖い。

このままキスされてしまうのかと思うと、自然と両手で髪をぎゅっと握っていた。

それはあなたが怯えたり不安になっている時のお決まりのポーズ。

あなたが泣きそうな顔になっているのに気づき、廉はハッと真顔になる。
永瀬廉
永瀬廉
……やめろ、それ
春名あなた
春名あなた
……っ
だけどあなたは相変わらず怖がったままで、廉は結局それ以上手出しができなかった。

だって廉はあなたを怖がらせたいわけじゃない。

ただ普通の恋人同士のように、甘い時間を過ごしたかっただけなのだ。
永瀬廉
永瀬廉
……次はこの程度じゃすまへんからな
廉はシャツの前のボタンをとめ、あなたのそばから離れた。

その時、棚に手を引っかけて置いてあった箱を床に落としてしまう。
永瀬廉
永瀬廉
春名あなた
春名あなた
箱の中にはたくさんの写真が大事にしまってあったようで、それらがばらばらと床に散らばる。
春名あなた
春名あなた
い、いつかかわいくアルバムにしようと思って……
あなたはベッドから起き上がって、写真を拾った。それはA4ぐらいにパウチ加工され、
かわいらしくコラージュしてある写真だ。写真には小さい頃の廉やあなたが写っている。
永瀬廉
永瀬廉
これ……ガキの頃、一緒に星の村に旅行したときの
春名あなた
春名あなた
うん
永瀬廉
永瀬廉
……
写真を見ながら、廉はあなたと星の村に行った時のことを思い出した。






















あれは廉の10歳の誕生日の時だった。永瀬家と春名家合同で、
流星群が見える星の村に旅行した。
だけど後から合流するはずだった廉の両親は、仕事の都合で宿泊そのものがキャンセルになったのだ。
☎通話中…
永瀬廉
永瀬廉
え、来られへんの?
廉の母親
ごめんね、なんとかパパかママかどっちか行こうとしてたんだけど……
どうしても仕事が終わらなくて……
先にペンションに来ていた廉は、母と電話しながら言葉を失った。

両親が自分の誕生日よりも仕事を選んだことがショックだったのだ。
廉の母親
お誕生日のお祝いは、今度してあげるから
永瀬廉
永瀬廉
……いーよべつに。子供じゃねーし
☎通話終了…

だけど素直に『どうして来てくれないの』と言うこともできなくて、
当時の廉は無理やり平気なふりをするしかなかった。























廉が10歳の誕生日について覚えているのは、大体そんなところだ。

あなたが大事にとっておいた写真には、10本のローソク立てたケーキを囲んで、
廉とあなたとあなたの両親が写っている。

あなたからのプレゼントを受け取った廉。夜空を一人で見上げる廉。

両親の代わりにあなたやあなたの両親が誕生日を祝ってくれただろうに、
そのことについては記憶が曖昧あいまいだ。
永瀬廉
永瀬廉
……何も覚えてへんな
春名あなた
春名あなた
え……宝探しは?廉くんが森に隠した大事なものを、私が探しに行って……
永瀬廉
永瀬廉
ンなことしたか?
逆にあなたの方は、昔のことをよく覚えている。

写真を手にしながら、当時のことを懐かしんだ。
春名あなた
春名あなた
したよ。あのとき、廉くん、『俺の大事なもん見つけたら、ダメダメじゃねぇって認めてやる』って言ってくれて……。でも結局、私、見つけられなくて……
永瀬廉
永瀬廉
そうだったか?
春名あなた
春名あなた
そうだよ。気になってたんだ、ずっと……。廉くんの大事なもの……
どうなったかなって
永瀬廉
永瀬廉
俺、隠したっけ?
春名あなた
春名あなた
お、覚えてないの……?
だがあなたの大切な思い出を語っているのに対して、廉の方は当時のことを
覚えていないようだ。首をかしげて、もう一度思い出そうとするけれど。
永瀬廉
永瀬廉
……マジで忘れた
春名あなた
春名あなた
……隠し場所も?
永瀬廉
永瀬廉
さっぱり覚えてへん
春名あなた
春名あなた
そう、なんだ……
廉のケロッとした態度に、あなたはショックを受けた。

あの星野村での思い出は、あなたにとっては大事な大事な宝物。

だから廉もきっと同じように大切にしてくれているんだと思っていた。

だけど廉はあの星の村でのことを全く覚えていないという。

この温度差が、あなたの心を傷つける。

目の前にいる人は、本当に自分が大好きな廉くんだろうか?

本当の廉くんだったら6年前思い出も、宝物の隠し場所も覚えているはずなのに……。

ついそんなふうに考えてしまい、あなたは泣きそうになる。
永瀬廉
永瀬廉
つか次の休み、どこ行く?
春名あなた
春名あなた
……
あなたが大きなショックを受けていると気づかず、廉は来週の予定について話始めた。

スマホを取り出して、【人気のデートコース】を検索する。
永瀬廉
永瀬廉
海の見える公園とかベタすぎるか。遊園地ってのもアレやしな。
なんか映画とかやってへんかな、映画
春名あなた
春名あなた
……
永瀬廉
永瀬廉
あなたは何したい?
春名あなた
春名あなた
……
永瀬廉
永瀬廉
なぁ
春名あなた
春名あなた
……
永瀬廉
永瀬廉
聞いてんねん、何したいって
廉はポンっとあなたの頭を撫でるが、あなたは反射的にビクッとする。
永瀬廉
永瀬廉
なんだよ、ヤなのか?
春名あなた
春名あなた
……じゃなくて……
永瀬廉
永瀬廉
…?
春名あなた
春名あなた
覚えてないんだ……大事な宝物の隠し場所……絶対忘れんなって言ってたのに……
永瀬廉
永瀬廉
ガキの頃の話やろ。それよりどこ行きたい?
春名あなた
春名あなた
……
あなたは廉の質問に答えなかった。廉は、そんなあなたの態度を、
優柔不断と受け取ったようで、再びスマホで検索する。
永瀬廉
永瀬廉
何だよ、お前ってホンマ俺が何でも決めてやらないとダメなんや
春名あなた
春名あなた
今の廉くん……違う……
永瀬廉
永瀬廉
は?
そこでようやく、あなたは重い口を開く。
春名あなた
春名あなた
なんだか知らない人みたい……
永瀬廉
永瀬廉
付き合い始めたから、優しくすることにしたんだろ
春名あなた
春名あなた
……う、嬉しくない
永瀬廉
永瀬廉
……!
とうとうあなたは、口に出してはいけない言葉を口にしてしまった。

廉の彼女(仮)になってからずっとずっと感じていた違和感が、大きな風船のように
膨らんで、このタイミングで爆発したのだ。

今までのあなたなら廉に対し口答えなんてできなかった。

大人しく彼の言いなりになっていただろう。

だけどあなたはどうしても我慢できなかった。

そんなあなたの変化に廉もようやく気づいて、キッと厳しい表情になる。
永瀬廉
永瀬廉
どういうことだよ?
春名あなた
春名あなた
……
永瀬廉
永瀬廉
何が言いたいんだよ?
春名あなた
春名あなた
……戻りたい。幼なじみに……
あなたの目尻から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれた。

その涙を目にして、廉は思わず声を荒らげる。
永瀬廉
永瀬廉
……なんやねん。幼なじみって!
春名あなた
春名あなた
心)怖い……廉くんが知らない人みたいで……怖い……!
あなたはキュッと肩をすぼめ、両手で髪を握りしめた。
春名あなた
春名あなた
心)どんなに優しくされても、甘い言葉を言われても、それは本当の廉くんじゃない。
言葉はキツいし、少しだけ怖いけど。言葉や態度のうしろに優しさを持ってる。
私が好きだった廉くんはそういう人……。でも今の廉くんは違う……
あなたは思う。廉の彼女(仮)になってから、廉は変わってしまった。だったら
元の幼なじみに戻れば、また自分が好きだった廉に戻ってくれる──と。
だけどあなたと恋人になりたい廉にとって、『幼なじみに戻りたい』
という願いはNGワード。

どうしてもあなたが突然そんなことを言い出したのかわからなくて、 
腹の底から怒りがわき起こる。

あなたは両手で髪を握りしめたままだ。
永瀬廉
永瀬廉
またかよ!やめろって、それ!俺にはしなかっただろ!
春名あなた
春名あなた
……やっ
廉はあなたの手首をつかみ、無理やりキスしようとした。

そんな廉をあなたはドンッと突き飛ばし、力の限り抵抗する。
春名あなた
春名あなた
れ、廉くん、ご、ごめ…っ
永瀬廉
永瀬廉
………!
あなたの本気の抵抗に遭って、廉はショックを受けた。

あなたはすぐ謝るけれど、二人の間には、かつてないほど重い空気が流れる。
永瀬廉
永瀬廉
わかった。どうしても戻りたいんやな。ただの幼なじみに
春名あなた
春名あなた
……
永瀬廉
永瀬廉
望みどおりにしてやるわ
春名あなた
春名あなた
……っ!
廉はそう吐き捨てると、バタバタとあなたの部屋を出ていった。

あなたはその後を、追うこともできず、一人部屋の中で呆然とする。
春名あなた
春名あなた
心)どうしてこんなことになっちゃったの?私は廉くんを怒らせたかった
わけじゃない。でもあのままカノジョカッコカリのままでいるのも……辛くて……
あなたは廉が出ていってからもしばらく、ぽろぽろと涙を流し続けた。

それは長年付き合ってきた幼なじみの、生まれて初めてのケンカだった。
  NEXT
作者
作者
更新がとても遅いですが、これからも読んでくれると嬉しいです!