放課後。
海人は廉に、美桜はあなたにそれぞれの気持ちを聞くことにした。
まずは海人と廉。女子生徒の告白を利用して、あなたを彼女 (仮)
にした廉に、海人はチクリと一言。
廉は海人から視線を外し、ふてくされる。
図星を指されて、廉はますます不機嫌になった。
廉も自分に勇気が足りないのは分かっている。
でもあの平野紫耀にはどうしても負けたくない!負けないためにはあの男よりも先に、
形だけでもあなたを自分のものにする必要があったのだ。
そうだ。これからはあなたをイジめるんじゃなく、あいつみたいに優しくしてやろう。
あなたの笑顔が見たいから。あなたに自分を好きになって欲しいから。
本当の気持ちが伝われば、あなたも自分を幼なじみではなく異性として意識してくれるはず!
廉はそう必死に自分を励ましていた。
そんな廉を見て、海人は「相変わらず不器用な奴・・・・・・」と心配になるのだった。
一方、あなたと美桜はトイレで長い間話し込んでいた。
話題はもちろん新しいあなたと廉の関係についてである。
美桜は強い口調で言い切った。あなたはあなたで突然廉に
彼女(仮)に指名されて、ずっと戸惑っている。
うつむきがちに、素直に自分の気持ちを告白するあなた。その横顔はとてもきれいだ。
恋・・・・・・だよね? ━━━と、美桜は言い出せなかった。
いまだにあなたは自分の廉に対する気持ちを自覚していない。
あなたは廉を幼なじみとしてじゃなく、ただ一人の異性として好きなのだ。
けれどそれは他人に指摘されて気づくんじゃなく、あなた自身が
気づかなければいけないこと。だから美桜は喉まででかかった言葉を、グッと奥に飲み込んだ。
女子トイレを出た後、昇降口に向かいながら、美桜は廉を避難した。
正式にあなたに交際を申し込めないヘタレぶりが、廉らしいといえば廉らしいけれど。
美桜の話を聞いていたあなたは、廊下の途中で足を止める。
あなたは切なそうに微笑んだ。
廉のためなら、彼女 (仮)なんてよくわからない中途半端な立場でもいいと言うあなた。
そんなふうにあなたが健気であればあるほど、美桜は苛立ってしまう。
美桜はあなたに精いっぱいのアドバイスを贈った。その言葉はあなたの深いところに
突き刺さり、わずかな波紋を巻き起こす。
あなたにとっては自分の気持ちなんて二の次で、いつも廉を優先してきた。
それが当たり前だった。でもそれじゃダメだと美桜は言う。
子供の頃から続けられてきた廉の洗脳は、まだまだ強固出来ない。
あなたはその腐りからなかなか解き放たれないのだった。
廊下で美桜と別れた後、あなたは大階段のとことで廉と合流した。
あなたを待っていた廉は、あなたに向かって手を差し伸べる。
廉に手を握られるのは嬉しい。だけどいつもと違って優しい態度の廉に、少し違和感を感じる。
廉は緊張しているあなたの手を握ると、大階段を降り始めた。
二人が仲良く恋人繋ぎしているのを見て、周りの生徒が「大胆!」
「やっぱりあの二人、デキてたんだ・・・!」と騒ぎだす。
あなたの胸はまたドキドキしていた。それはときめきによるドキドキと、不安によるドキドキ。
どっちも同じくらいに混じっていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。