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第15話

第三幕 悲嘆 第二話 不在の友を思う
30
2022/08/03 22:34
 憂鬱な月曜日となったけれど、桃はその日、教室に姿を現さなかった。
 いつものように動いていたメッセージトークも、ぴたりと止まって。
「桃......」
 勉強をしながらでも、そんな声が漏れてしまう。
 あの桃が無断欠席? そんなのはさすがにありえない。
 何かに巻き込まれたのかもしれない。その線が一番濃いだろう。
 桃の不在は、それでもやっぱり私の心の拠り所を失ったような感覚に苛まれて、それほどに重大なことなのだ。
 うめに何か知っているかと話を聞いたら、むしろうめにそっちこそ何か知っているかと聞き返されてしまった。
 一体、何が起こっている──?

 翌日も、桃は姿を現さない。
 担任である深山先生はこう一言告げた。

「──清江さんが、行方不明になったそうです」

 クラスメイトの皆がどよめく。
 それでも深山先生は、表情一つ変えずに言葉を続けた。
「詳しいことはわかりませんが、帰りを待ちましょう」
 感情を押し殺しているようだった。
 休み時間となり、私は先生に問い詰めた。
「先生、桃はどうして......」
「わからないんです。臼見さんも清江さんと仲が良かったですよね。それなら、帰りを待ってあげてください。」
「なんで桃なんですか」
「それはわかりません。どうしても。」
「先生、本当に何も知らないんですか」
「知りません。教師と言えど、万能ではありませんから。できることなどないんです。特にこういった行方不明なんてことが起きた場合には」
 それ以上、私は何も言えなかった。はっと我に返り、「すみません」の言葉を口にし、先生の元を去った。
 その時、ちらりと見えた。先生の口元が少し緩んでいたのだ。
 ──笑いを我慢しているように。

「......え、深山先生が?」
 昼休み、うめと弁当(私は購買で買ったパンだけど)を食べながら、そんな情報を共有していた。
「あの深山先生が? そんなこと......見間違えではないですか?」
 うめは生徒会の仕事で深山先生のことを信頼しているようなので、先生側を擁護するようなことを言った。
「見間違え......だと、いいんだけど」
「にしても、深山先生が関わってるとしたら、何をしたのでしょう...。桃に危害を加える理由なんて、ないでしょうし」
「それはそう.....だよね」
 ゆっくりと流れてゆく雲は、私たちの心情なんかお構いなしに、呑気に我々を見下している。
 この先、何か嫌な予感がしてたまらない。
 この予感が外れることを願うが......。

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