第14話

第三幕 悲嘆 第一話 メランコリー
36
2022/08/03 22:33
 そういうものなのだろうか。
 恋愛は。
 私は自室の一角で、スマホを手に憂鬱な日曜日を過ごしていた。
 桃はうめのことが好きで、私の桃への愛は断られたも同然。梅の方はどう思っているのか知らないけれど、それでも私はとにかく動く気力を失っている。
 失恋? いいや、そもそも私の感情は恋情などではない。
 一方的な『好意』のようなものだ。
 そう思い込めば、気が楽になれるだろうか。
 そんなことを考えながら、私はスマホを操作する。
 衝動的に、SNSというものを始めた。フォローしたのは桃のアカウント。正直なところ使い道はよくわからない。なんのためにSNSというものがあるのか、未だに考えられない。あまり馴染みがなかったから。
 けれど桃のアカウントを覗けたのは、なんのか知らないが大きな成果だろう。桃のアカウントは、桃が学校に来た日にぴったりと投稿が止んでいる。これまで、色々な歌や番組出演の情報などを宣伝していたようだった。越訴楽これが『公式アカウント』のやることなのだろう。フォロワーは三十万をゆうに越していて、さすが国民的歌手だと思わされるばかり。
 私は、桃の芸能活動のことを何も知らない。どんな思いで人々が注目するステージに立って、どんな思いでカンペ通りの言葉を放って笑って、どんな思いでそれらを辞めたのか。
 結局、私は桃のことを知らないままで、うめの方がよく知っている。それだから、桃がうめに恋情を抱くのは、仕方がない。
 ああ、ため息しか漏れない。
 憂鬱。暖かいはずなのに寒く感じてしまう。
 こんなにも、叶うはずのない恋に破れたことで傷つくなんて、思いもしなかった。
 なんてことだろう。
 けれど私はあの時、あんな反応をしたからには、隠し通すことしかできない。
 久しぶりに、学校に行きたくないと思った。


 わたしはあんずちゃんに変なことを言ってしまった。好きな人をさらすとかなかなかありえないありえない!
 けれどあんずちゃんはさらりと流してくれたものだから、助かった。
 わたしはジョギングをしながら、そんなことを考えていた。ジョギングをしているときは、様々なことを考える。
 ああ、明日学校に行くの嫌だなぁ、とか、マジカルランドに行きたいなぁ、とか、そういえば昨日録画したマジカルランド特集をしていたニュースも見ないとなぁ、とか。他愛もないことを考えているうちにあっという間に時間は過ぎていくもので、目的地である学校まではすぐに着いてしまった。
 学校に用があるわけではないけれど、わかりやすいし、折り返し地点としては丁度いい。
 というわけで、しばらく校門の傍で休憩をしよう──そう思った時だった。

「静かにしろ」

 肩を掴まれ、反射的に振り向くと、手袋もしていない素手で口を塞がれ、抗って口を塞ぐ手を引っ掻くも、わたしの意識が遠のく方が早かった。
 聞こえた声は、なんとなく聞き覚えのある、女性の声だったような気がする。

プリ小説オーディオドラマ