貴方が空に浮かぶ雲なら
それを見上げる僕はクラゲの様だね
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「よーへーさん、ごめんなさい」
そう言って俺はそっと眠る彼の唇に自分の唇を重ねる。
そして寝部屋を後にした。
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よーへーさんと付き合えてすぐの頃は素直に嬉しくて楽しくて、良い意味で周りが見えてなかったんだと思う、多分。
でも月日が経つとどんどん彼に幸せになって欲しくて。
俺らの間に"愛"があっても
戸籍上夫婦にはなれないし子供も出来ない。
その事実は俺を悩ませるには十分すぎた。
それによーへーさんは整った顔をしている。
俺なんかに彼の隣は似合わない。
これ以上苦しむなら、この関係を自らの手で葬ろう。
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苦渋の決断を下した俺は、公園のベンチで悲劇のヒロインよろしく回想に勤しんだ。
すると俺のスマホがそれに呼応するかのように鳴る。
液晶画面には
大好きな人の名前
「...はい」
『お前今何処や!!』
彼は珍しく声を荒らげる。
「もうよーへーさんには関係ないですから。」
『関係あるわ!!』
電話口とは違う...
後ろを振り返ると彼が息を弾ませながら立っていた。
そのまま俺はよーへーさんに肩パンされる。
「何がごめんなさいや!!勝手に決めやがって!!」
「でも...でも...」
「俺は世界から嫌われてもけんすけが隣にいてくれたらそれでいいんよ。」
そう言ってよーへーさんは俺をキツすぎるくらいに強く抱きしめた。
「やから俺を1人にしないで...」
強く抱きしてるとは思えないほど弱々しく呟く。
「でも俺とは結婚出来ないし、子供も出来ないよ??よーへーさんは格好良いけど俺はそんな事ないし...」
「俺は上村健介がいいんです。」
食い気味にきっぱりとそう言う。
俺の首元に埋めていた顔をあげ、俺の方を見つめる。
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「俺も...釣田洋平さんがいい!!」
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そろそろ日暮の声がしだす頃
クラゲの姿が見える頃
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。