てつぽんのお母さんから"遅めのバレンタイン"ということで送られてきた大量のチョコレート。
ミルク、イチゴ、ホワイト...なんて普通な味だけじゃなくて少し変わった味も。全部キャンディみたいにキラキラで可愛い包み紙に包まれて宝石みたいだった。
「にしても多くね??」
なんてはじめさんとようへいくんは笑ってる
(呆れてるのか...??)
「いやぁ...皆で食べてって」
てつぽんもここまで多いと笑うしかないようだった。大きなダンボールいっぱいの1口サイズの宝石。
どうするかは後から考えることになり、はじめさんとけんすけはメインの撮影をしに2号室に、ようへいくんととまんはコンビニに行った。
俺は煙草を吸いにベランダに出たてつぽんを眺めつつ窓辺に座り、黄色の包み紙のチョコを手の上で転がした。
「てつぽん、1個食べてもいい??」
「全然いいっすよ」
包みを開くと普通のチョコが顔を出す。恐らくミルクチョコだろう...そう思い口に運ぶと
「なんか変な味する...」
「まじすかw」
ミルクチョコの甘い味を想像していたのに...口に拡がったのは苦い味だった。
「変な味っすか...」
そう言いながらてつぽんは不意に俺に近づいてきて
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「うわ...確かに変な味っすね、何味か聞いてみますわ。」
そう言いながらてつぽんはスマホを取りに下に降りた。去り際に
「たなっちさん、ご馳走様です」
少し嬉しそうに笑いながらそう言い残して。
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口の中の苦い味は、煙草の風味に変わっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。