新幹線が来るまで駅のホームで二人待っているが
さとみくんは朝からテンションが下がっていて
今もシュンとしてる
不貞腐れたように唇を尖らせて言った
立ってるだけで体の芯まで冷えて身震いしてしまう
人目があるのにも関わらずに
持っていた黒のスーツケースを手から離してまで
後ろから抱きしめられて私の肩に顔をうずめた
ハグしてくれた手をギュッと握ってみた
「嬉しすぎるって…w」と照れくさい気持ちもあったが
首だけ振り向いて言うと
両頬を手で包み込まれて唇をそのまま塞がれた
一回で終わる気がしない…///
さすがに公共の場でそういう激しいのは、、、///
「しょうがないかぁ」と渋々といった様子で
私の両頬から手を離した
ホームに新幹線が着いたようで
ゾロゾロと新幹線の中に人が吸い込まれるように
入っていって「時間か…」と
名残惜しそうに腕時計を見て呟いていた
手を振りながら私は言うと
さとみくんは優しく微笑んでぽんと頭に手を置いて
「あなた愛してるわw」と言い残して
新幹線に入り込んでしまった
新幹線のホームを出て、駅ナカを一人歩いていると
お土産売り場に見覚えのある人影を見つけた
多分後ろ姿からして見たことある
お土産売り場のお菓子を目の前にして
体を揺らしながら吟味している
心做しか楽しそうで話しかけようとしたが
と忠告を受けているのもあり
話しかけるのは、やめてそのまま家に帰ろうとした
言われたことは守んないと…また不安にさせちゃうから
邪念を払うように首を横に振って再び歩き出すと
元気な声と共に後ろから捕獲するみたいに
がっしりと腕を掴まれた
"あなたちゃんと一緒に過ごしたいんだけど…"
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。