ピッと通信機を切った私は、もう1度玄関に目を向ける。大勢の人が出社してくる中、私は1人、緊張で手に汗握る状態だった。
しばらく見送っていると、ある人物が目に入った。
目標を見つけた私は、急いで通信機で連絡をした。
私は隣のエレベーターに乗り込み、ドキドキと逸る心臓と緩む頬をなんとか押さえていた。
<センラ シテン>
朝、スマホを見ればLINEの通知が100を超えていた。まぁ、それもそのはず。なにせ、僕の誕生日だから。
そんな冗談を呟き、目玉焼きの焼ける音と匂いを楽しみながらメッセージ1つ1つを丁寧に返していった。ただ、あの子から....あなたちゃんからのLINEはきていなかった。悲しいような、寂しいような思いを抱きながら、僕は目玉焼きののったパンにかじりついた。
今日も、いつもと同じような日常。違うといえば、今日はなんだか信号に引っ掛かりやすい。
なんとか気分をあげようと、浦島坂田船の曲を流す。鼻唄を歌えるほどには回復した僕の気分は、そのまま会社まで続いた。
なにか視線を感じながらもエレベーターに乗り、目的の階のボタンを押した。チーンというエレベーター独特の音がして、ドアの隙間がゆっくりと見えてきた。すると───
パーン、パーン という爆発音にも似た音と共に、カラフルな紙テープがヒラヒラと目の前を舞った。驚いて声をあげ、エレベーターが閉まる前になんとか降りて、もう1度エレベーターを取り囲む皆を見る。
どうして誕生日を知っているのか、と聞こうとすると、元気な声が隣のエレベーターから聞こえてきた。───と思ったら、叫び声と共に倒れてきた。
間一髪でそれを支えると、あなたちゃんは顔を真っ赤にして、早口で ごめんなさいっ! と言い離れた。その行動に、通勤路にある幼稚園の園児達が目に浮かび、思わず ぶふっ と吹き出してしまった。
それがトドメとなった。この雰囲気からのたどたどしいお祝いに、僕の笑いのツボは完全に浅くなっていた。
やっぱり、あなたちゃんは面白い。僕の目には、目の前にいるあなたちゃんの真っ赤に染まって焦ったような顔がうつった。
美咲さんに怒られて、どうにか笑いを堪えた。
部長が手を叩いてそう言ったのを合図に、全員が一斉に散らばった。
そこで、僕は美咲さんにさっき聞こうと思ったことを聞いてみた。
美咲さんはにやっと笑ってから、耳元でこそっと囁いた。
机に行くと、小さな箱がちょこんと置いてあった。開けてみると、最新のイヤホンが入っていた。しかもこれは、前から欲しいと思っていたやつだ。そして、メモ紙が1枚。
『配信で欲しいと聞いたので、プレゼントにしました。よければ使ってください。 あなた』
美咲さんの言葉が、脳内で再生される。
チラリとあなたちゃんの方を見ると目が合って、顔が少し赤くなったあとふわりと照れ笑いを向けられた。
ドキン と胸が高鳴ったのが分かった。
この胸の高鳴りの名前を僕が知るのは、
もう少しだけあとの話───
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おはようございます!こんにちは!こんばんは!
作者のゆうなです!
小説を読んでいただき、ありがとうごさまいます!
センラさん、誕生日おめでとうございます!
これからもずっと応援してます💕
もう少しキュンキュンするお話が書きたかったんですけど、なんか変な感じになってしまいました.....ごめんなさい....
今回のお話は、今投稿されてるお話よりもう少し先のお話で、呼び方も少し違うんですけど、そこは暖かい目でスルーしてくださると幸いです。
次回からも、小説と作者をよろしくお願いします!
いいね❤️ お気に入り⭐️ 待ってます!(о´∀`о)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。