第2話

出会い。
462
2021/08/17 11:57
幸せな人生なんてものは、この世に存在しません。
もしあるとしても、俺には縁のないこと。Subとして生まれ、Domの欲を満たすためだけに存在するから。


幸せなんて、求めてはいけないんです。





うらたside
浦田 渉
…ふぁ。
今日も眠いな…ふぁ〜。
あ、おはようございます。うらたです。
今年で20歳になります。
20歳になりますが…パートナーのDomはおりません。
いないというか、つくらないんです。向こうから見つけてくれるまで。

そんなこと、あるわけないのにね?
浦田 渉
あ…学校遅れちゃう…
俺は急いで支度をして学校に向かった。
浦田 渉
おはよぉ。
すれ違う人達に挨拶をして教室に向かう。
浦田 渉
(今日も群がってんなぁ。)
俺は1番前の席の男を見た。

遠目からでもわかる整った顔。しかも家がお金持ちらしい。
片や俺は、眼鏡をかけてていつも暗い。家も決して裕福ではない。彼とは正反対です。
subじゃなくても人がよってくる。まぁ、お金持ちの彼女さんになれれば一生遊んで暮らせますからね。
浦田 渉
あ…
首につけてるcolorから欠片が落ちてきた。



俺がつけてるcolorは、高校生からつけています。親が、なけなしのお金で買ってくれた最後の贈り物です。『最後』というのは、そのすぐ後、交通事故で亡くなりました。
colorはとても高く、俺なんかにはとても買えません。もしこれが壊れたら、誰かからお下がりで貰おうかと考えています。

例えば…ほら、彼とか。
月崎 志麻
おはよう。うらたさん。
浦田 渉
おはよ。相変わらず高そうなcolorしてんね。
月崎 志麻
ちょ、ばっ////
浦田 渉
ふふ。
彼は月崎志麻。俺と同じsubですが、もうパートナーがいます。しかも、社会人。


彼の首についてるcolorには、宝石が散りばめられていて、しかも緊急時にボタンを押せば、パートナーにSOSが行くという最近話題のやつ。さすが社会人のパートナー。
月崎 志麻
新しくこの前買って貰ったんだ。『志麻くんはドジだから高いやつじゃないとすぐ落とすから』って。バカにしすぎだよね。
そう言いつつも、内心嬉しそうな志麻。
浦田 渉
俺もうボロボロ。さっきも欠片落ちてきた。
月崎 志麻
えぇ…買ったろか?
浦田 渉
いやいいよ。壊れたら、まーしぃの使わなくなったやつ貰うから。
月崎 志麻
そうかえ?
浦田 渉
うん。
月崎 志麻
…うらたさんも、そろそろパートナー見つけてもいい頃じゃない?
じゃないと変なおっさんに喰われるよ。
浦田 渉
そこまでドジじゃない。まーしぃと違って。
月崎 志麻
なっ…
浦田 渉
ふふ。
いつも通り時間が過ぎ、帰りの電車へ。
浦田 渉
(だよなぁ。俺もそろそろパートナー見つけなきゃかぁ。でも合コンなんてやだしなぁ。ん〜。)
そんなことを考えていると…
サワッ
浦田 渉
ゾゾゾゾゾ…
(え?何?)
少し視線を後ろへ送ると、俺の尻を触る大きな手。
浦田 渉
(嘘ッ…これって痴漢ってやつ?)
残念でしたね〜俺は男!!!!フハハ
カチャカチャ
浦田 渉
(ちょっと待って?確実にベルト外してない?この人俺の事男って認識してやってるよね。)
助けを呼ぼうにも恥ずかしさと恐怖で声が出ないし、俺にはパートナーもいません。
浦田 渉
(怖いッ…!)
咄嗟に前にいる人の服をキュッと掴んでみたんです。

すると、振り返った彼は俺を見てすぐ引き寄せてくれました。
坂田 優
大丈夫?
浦田 渉
コクコクッ
坂田 優
ベルト直しな。
誰かー!この中に警察系の仕事してる人いますかー!この人痴漢でーす!
俺を痴漢してた人は青い顔してましたイイキミ 
(次の駅で連れてかれてました。)
坂田 優
君さ〜高校生?
失礼な。立派な大学生です!!!!
浦田 渉
ムッ…
大学生です。
坂田 優
あ、ごめんごめんW
Subなんだったら、Sub専用の電車乗ればよかったのに。
浦田 渉
あ…確かに。ぼーっとしてて考えてませんでした…
坂田 優
それに、そんなボロボロのcolorつけんじゃないよ!おいで?新しいの買ったげる。
浦田 渉
い、いえそんなッ…
なんなんでしょうこの人。凄いグイグイくる…
浦田 渉
あ!俺この駅なんで!!!!ありがとうございました!
坂田 優
お、まじ?俺もこの駅。
浦田 渉
あ…ソナンデスネ
嘘でしょう!?
坂田 優
送ってくよ。乗って。
浦田 渉
い、いえ…大丈夫デス。
坂田 優
いーからいーから!
浦田 渉
えぇ…
と、遠くに志麻を発見!!!!
浦田 渉
あ!友達が!それじゃあ!!!!
坂田 優
友達…?あ、おーいちょっと!
俺は志麻のもとに走りました。
月崎 志麻
それは大変やったねぇ。
浦田 渉
ほんとぉ…はぁ。
月崎 志麻
ドントマインド
浦田 渉
うん…
この時の俺は、この出会いが俺の人生を狂わせるとは思いもしませんでした。

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