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第24話

第24話
唐突のカミングアウトに、私は驚きで身動きが取れなかった。
葵
…それで、今持ってる俺の楽譜を後輩たちに割り振らなきゃいけなくて
明香里
明香里
……なんで?
葵
え、だって俺のパートが抜けるから
明香里
明香里
そうじゃなくて、なんで部活辞めるの?

その理由を自分の頭で考えられる余裕はなかった。



何か話していないと、得体の知れない負の感情が今にも溢れ出てしまいそうだった。
葵
受験生になるから。だから今日は俺の穴埋めを一緒に考えてほしい。
淡々と話す葵くんの口調は、一体何を考えているのかよく分からない。
明香里
明香里
…葵くんは寂しくないの?
だってもう、あと数ヶ月しかないよ?



毎朝の早朝練習、放課後のパート練習、いつも隣にいた葵くんがいなくなるなんて、想像したくない。



葵くんは少し目を伏せると、そのままの姿勢で、
葵
…まあ、楽器は卒業してからも続けるし
と、何の色もついていない声色で答えた。
明香里
明香里
…………そっか。
なんとか声を絞り出して、そう答えるのが精一杯だった。



さっきからずっと俯き加減の葵くんは、もうこの話はしたくないのかもしれない。



しんみりしたこの雰囲気を嫌がっているのかもしれない。
明香里
明香里
…じゃあっ、引退する時にやり残しがないようにしなきゃねっ
私は、いつも通りの空気に戻そうと平静を装う。



だって葵くんは、引退と、私との別れは何も関係のないことだと思ってるから。



この日はもうこれ以上会話の糸口が見つかることもなく、私だけがずっと苦しかった。