今までで一番目覚めが悪い朝だった。
教室に入っても体はぐったりしたままで、なんとか目だけは開けるようにしていた。
声のした方に顔を向けると、明香里の目が俺を捉えていた。
……ああ、やっぱりな。
瞬きもせずに俺を見つめるその目から、だいたい返事がどんなものか分かってしまった。
そばにいた葵が口を挟むが、明香里は俺から視線を外さなかった。
明らかにいつもと違う明香里の雰囲気は、葵にそれ以上物を言わせなかった。
それだけ言い残して、明香里は踵を返して自分の席に戻った。
初めて葵に焦燥の色が広がったのを見た。
俺は何事もなかったのように携帯をいじり始めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。