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第30話

第30話
雄哉と分かれた後、音楽室で楽器を組み立てて練習に向かった。



その足どりは不思議と軽かった。



今日、練習が終わったら、葵くんに言おう。



隣からいなくなってしまう前に、ちゃんと言葉で好きだと伝えよう。



持っていた譜面台を下ろし、空いた右手で教室の扉に手をかけたところで、違和感を感じた。



ここで練習しているはずの、葵くんの音が聞こえない。



ゆっくり扉を開けると、葵くんはそこにいなかった。



楽譜の乗った譜面台だけが取り残されたように置かれている。
葵
明香里っ
後ろから葵くんの声がした。



振り返ると、息を切らした葵くんが、右手でしっかりと楽器を握りしめながら立っていた。
明香里
明香里
葵くん?!どこ行ってたの?
葵
……西階段の、踊り場。
明香里
明香里
楽器持ったままで?
葵
……あ、ほんとだ
楽器を片手に、西階段まで走る葵くんの姿を想像すると、とたんに笑いがこみ上げてきた。



はじめはぽかんとしていた葵くんも、私につられて笑い始めた。
葵
俺さ、こんなふうに笑えるのは、相手が明香里だからだよ。
さりげなく私に笑いかける。



不意打ちに笑顔を向けられて、どきっとしないわけがない。



ひとしきり笑った後、ふっと静寂が流れた。



その空気を破ったのは、
葵
俺、明香里のことが好きなんだ。
葵くんの告白だった。



驚いて目を見開くと、葵くんは優しく微笑んだ。
葵
俺と、付き合ってくれないか。
夕日の差し込む教室、組み立てた楽器、1人ひとつの譜面台。



いつもと同じ風景の中に、ほんのり甘い空気が流れた。