下駄箱で特定の誰かを待って、一緒に帰る、ってなんかカレカノみてえ。
そんなことを妄想する反面、俺は昨日から気が気じゃなかった。
葵のやつ、突然明香里に話があるとか言いやがって。
朝の千紗の言葉を思い出す。
『それって告白じゃない?』
…ああダメだダメだ!
さっきから同じ思考が頭の中でぐるぐる回っている。
もしそうだったら、俺も今日告白せざるを得ないじゃないか。
口の中で言葉を噛みしめる。
手を固く握りしめたその時、足音が近づいてきてすぐそばで止まった。
いつもの明香里の声、いつもの明香里の笑顔。
葵と何の話をしたか気になっていたのに、明香里はなぜかいつもと変わらない様子だった。
潤んだ目が少し赤く充血していることを除けば。
下駄箱で明香里を待っている時、もし恋人同士ならこうやって一緒に帰るのが日常になるんだ、って思った。
もしも付き合うことになったら、そうやって2人きりの時間が増えるんだって思った。
もし付き合えたら。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。