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第28話

第28話
西階段の踊り場。



誰もいない現実離れしたような場所。



俺は、人気ひとけのない資料室の廊下で、千紗と茜のやりとりを盗み聞きした時のことを思いだした。



教室内に一緒に耳を傾け、顔を寄せ合ったこと、掃除用具入れの中で明香里を抱きしめたこと。



思い出しても苦しいだけなのにな。



周りが静かだと、考えることを止まられなくなってしまう。



そして、もうきっと、同じことは起こらない。



たどり着く結果は、結局どれも同じ。



はあ、と大きなため息をついてしゃがみこんだ。



階段を登ってくる音が、だんだん振動を伴って近づいてきた。
明香里
明香里
あのね…
雄哉
雄哉
気は遣うなよ、言いたいことははっきり言ってくれ
すっくと立ち上がり、明香里の顔を見下ろす。



もう、何を言われるか、だいたい分かるんだよ。



好きだから。
明香里
明香里
……私、他に好きな人がいるの
雄哉
雄哉
うん
明香里
明香里
それで、離れる前に、私も雄哉みたいにちゃんと気持ちを伝えてなきゃって…
雄哉
雄哉
俺のことはどう思ってるの?
明香里
明香里
っ…
雄哉
雄哉
別に怒ったりしねえからさ
ふっと笑ってみせる。



振られたって構わない、本当の気持ちが知れればいい、そんな意味を込めて。 
明香里
明香里
友達として、これからもそばにいてほしい
俯いた顔から、小さな声が溢れる。
雄哉
雄哉
申し訳なさそうな顔すんな、俺も同じだ
そう言って、俺は明香里に背を向け階段を登る。
雄哉
雄哉
泣くなよ、明香里。俺はこれからもお前の隣にいられることが嬉しいんだから。
登りながら、明るい声で呼びかける。
雄哉
雄哉
はい、どーぞ
扉を開けて、明香里が来るのを待つ。



明香里は、ありがとうと言って、雄哉に先立って校舎に入った。



誰もいなくなった踊り場を見下ろして、もうここに来ることもないだろうなと思った。