ガシャンッ……
雨の室内練習で使う椅子を取りに行ったら、教室から物音が聞こえた。
ったく、雨練とかだるいな…
運動部は筋トレしかすることねえもん。
あ、でも吹部の練習盗み見できるかも。
明香里の吹いてるところも見れるかもな。
なんて考えながらその教室に入ると、葵に体を抱きかかえられている明香里の姿があった。
どういう状況だよ。
あとなに明香里も顔赤らめてんだよ。
いやいやまず楽器より明香里の心配をしろよ。
不意に名前を呼ばれて少し胸がざわめく。
いいよな、同じ部活で同じ楽器とか。
ありがとう、という明香里の言葉を背中で受け、教室を後にした。
こういう時、なんかもっと、気の利いた一言が言えたら。
せめて、この気持ちに気づいてくれさえすれば。
なんてな。
あんまり女々しくなりたくねえけど、あんなところ見せられたらこう思うのも仕方ねえだろ。
俺があいつだったらよかったのに。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。