普通の人生だった。
朝起きて、学校に行って、
授業を受けて、友達と少し話して、帰る。
特別なことは何もない。
良くも悪くも、
ただの毎日。
私はそんな生活が嫌いではなかった。
平凡で、静かで、
安心できるから。
その日も、いつもと同じ帰り道だった。
夕方の空は、
柔らかな橙色に染まっている。
街灯がぽつぽつと灯り始める時間。
誰に言うでもなく、小さく呟く。
静かな住宅街。
人通りは少ない。
やっと家に着き、玄関で靴を脱ぎ、
誰も返してくれない言葉を唱える。
その時だった。
ふわり、と。
目の前に何かが舞い降りた。
白い羽。
私は思わず足を止める。
次の瞬間。
声がした。
頭上から。
見上げると、そこには
人影。
白い翼が広がる。
信じられない光景だった。
翼。
本物の、翼。
その人物は私の前に静かに
こちらへ歩いてきた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!