第8話
先輩は友達がいない
例のカッター女子事件の後
私が先輩の彼女だというウワサが一気に広まった。
登校途中、先輩の女子から睨まれたり
コソコソとウワサ話をする声がつきまとう。
半分涙目になりながら教室へと入ると
ほのかが私の手をとり窓際へと引っ張っていく。
むっとした顔。
怒っていても可愛いなんてズルいな。
私は今までのことを事細かに説明した。
だってほのかには嘘なんてつけない。
不安そうなほのかの顔は話が終わる頃には
ほころんでいた。
そう言いそうになって言葉を飲み込む。
まだ先輩を諦めていないほのかに
なんだか胸がチクリと痛む。
ん? なんだろ、この嫌な痛み────
胸の痛みは消えないまま午前中は過ぎていった。
***
***
先輩は前よりも横暴になった。
遠慮が無くなったというか、
ワガママになったというか……。
むっとむくれた顔。
この人、絶対わざとやってる……。
顔面偏差値100でその顔はズルい!
なぜか気にさわったのか
先輩はそっぽをむいた。
どうやら今日は特に機嫌が悪いみたい。
先輩は私を隣に座らせ
サンドイッチを乱暴に開けて無言で食べ始めた。
ストローをさして手渡すと先輩が私を睨む。
そう言ってまた先輩はもぐもぐと
サンドイッチを食べ始めた。
その横顔はなんだか寂しそうで
初めて会った日のことを思い出す。
──────
────
倒れた先輩はうなされながら
しきりに母親を呼んでいた……。
きっと何かあったんだろう。
でも私が踏み込んではいけない一線だと
静かに口を閉じる。
一向に直らないクズな先輩を前に
私はある決意をする。