はぁ……。
深いため息とともに重い足取りで校門をくぐる。
まさか私にとんでもなくクズな噂が
流れているなんて。
噂を流した犯人はもうわかってる。
元凶がひょっこり現れて、思わず後ずさる。
まるで昨日何もなかったかのような
いつもどおりの対応。
どういうこと?
昨日のアレは夢だったの!?
教室に入ると、昨日とは打って変わって
笑顔の女子たちが私を取り囲んだ。
まるで話がわからない。
ほのかの方に視線をやると
なんだか意味深な笑みを浮かべていた。
まるで女優のように悲しそうな顔を作り
ほのかは私に抱きついてくる。
ばっとほのかの手を振り払うと
彼女は心底心配そうな顔で私を見つめた。
彼女は意味深な言葉を残し席についた。
なぜかすごく嫌な予感がして、背中には汗が伝う。
朝のチャイムがやけに遠く聞こえた。
───昼休み。
***
***
いつもどおりの呼び出しにほっとする。
良かった……先輩は昨日と何も変わらない。
すり寄ってくる女子たちから逃げるように
私はお決まりの裏階段に急いで向かった。
一瞬、先輩の顔が曇る。
あれ?
気のせいだよね?
頑張って作ったノートを取り出して開くと
それをすっと先輩に奪われた。
次の瞬間、私のノートがみるも無残に
目の前で破り捨てられた。
バリッ、ビリ……!
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
何度も何度も先輩はノートを引き裂く。
破れたノートの破片がはらはらと落ちていった。
今まで聞いたことのないような低い声が響いた。
こんなの、きっとなにかの間違いだ。
叫ぶような大声に肩が震える。
ぐしゃり。
散らばったノートの残骸を踏みつける先輩。
まるで心を踏みつけられたような
鈍い痛みが胸に広がる。
じわりと涙が滲む。
それに先輩は目を合わせてくれない。
涙のせいでぼんやりと滲む視界。
頑なに目を合わせない先輩は私を突き飛ばした。
思わず転びそうになった私の手を
とっさに先輩が掴む。
でも、その目はずっと下を向いていて──。
先輩は放心状態の私を残し、階段を降りていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。