先輩の「ウソの彼女」になって早3日。
絶え間ないLIMEの通知に
私は深いため息をついていた。
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こうして休み時間に呼び出される理由は
先輩の告白を断るため。
先輩はそのまま私を女子生徒の前に押し出す。
今にも泣き出しそうな女子生徒に
私は申し訳ない気持ちで精一杯頭を下げた。
走り去っていく女子生徒。
嘘をついている罪悪感で胸がズンと重くなった。
目も合わせず帰っていく先輩の背中を見て
どうしたものかと頭を抱える。
───昼休み、本日2回目の呼び出し。
見るからに大人っぽい先輩女子は
涙の溜まった目で私をキッと睨んだ。
楠木先輩はそれを見て楽しそうに笑った。
本当に趣味が悪い。
───そして本日3回目の呼び出し。
本当ならキュンとするセリフなんだろうけど
……私にはまったく通用しない。
先輩が助けを求めてチラチラ見てくるけど
そっと目をそらして知らんぷり。
先輩は私のヘルプを諦めて
女子生徒を脅すように睨んだ。
ドスの利いた低い声。
怯えた女子生徒は涙をボロボロと
こぼしながら私を見た。
グサッ!
罪悪感の残る胸に彼女の言葉が突き刺さる。
私のウソがこの子たちを傷つけてるんだ……。
そんな私の気も知らず
先輩は走り去っていく女子を
満足そうな笑顔で見送っている。
その言葉でトラウマがフラッシュバックした。
忘れたい最低最悪な思い出。
私の父はこの世で一番のクズ男だ。
病気がちな母に黙って
家のお金を盗んではパチンコに通い
少ない生活費を使い果たした。
そして母が入院し、危篤だと知らせても
病院に一度も来なかった最低な男。
まくし立てるように降ってくるヒドイ言葉。
先輩とクズな父親が重なって見えた。
パシンッ───────・・・!
嫌だ、涙が溢れてくる。
泣かないって決めてたのに……。
私はそう言って
困惑する先輩をそのままに
その場から逃げ出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!