───週明けの月曜日。
先輩から「大丈夫」ってLIMEはきてたけど
本当に大丈夫なのかな?
上履きに履き替えながら
またお節介なことを考えていると
やけに突き刺さるような視線を感じる。
女子生徒たちの不躾な視線。
それをかき分けるようにやってきたのは
ほのかだった。
こちらを睨む大きな目は涙で潤んでいて……。
キッと私を睨みつけて
そのままほのかは足早に去っていった。
頭の中には「?」しか浮かばない。
何かとんでもない誤解をされている気がする。
そう思った瞬間、1時間目のチャイムが鳴った。
───そして、あっという間に昼休み。
なぜか今日はすべてが上手くいかない。
ほのかは私を無視して話を聞いてくれないし
クラスのみんなはコソコソとウワサ話をしている。
3股!?
とんだクズ野郎がいるみたい。
ん?田中先生って男だよね?
ってことは今噂されてるのって、女の子?
思ったより大きな声が出てしまって
周りがざわついた。
私がクズ…?
ど、どうなってるの!?
嫌な冷や汗が背中を伝った時
先輩からまたいつもの呼び出しがきた。
***
***
突然の呼び出しに
今回ばかりは少し救われたような気持ち。
私は空気の悪い教室から逃げ出すように
裏階段へ向かった。
そう一言だけ言って
先輩はなんだかぎこちなく目をそらした。
そう言うと慌てたように先輩は私の腕を掴んだ。
でも先輩の手を振り払うことなんてできない。
先輩の「クズ」にはちゃんと理由があった。
女性を近づけないように、傷つかないように
ただ自分を守っていただけ。
だから無理に矯正するなんて私のエゴだ。
まるで何かを確信しているように
掴んだままの私の腕をぐっと引いた。
近い距離に頬が熱くなる。
言われるがまま
はだけた制服の襟元へ手を伸ばした。
やけになめらかな肌と
それなのに男の人っぽい首筋に
思わずごくりと息を飲む。
するり。
少し出っ張った喉仏から鎖骨へ……
なぞるように指先を滑らせる。
少しだけ先輩は息を止めて
私が手を離すとふぅと息を吐いた。
ぱっと明るくなる表情にどきりと心臓がハネた。
無邪気な笑顔をこれ以上見ていたら
私はどうにかなってしまいそう。
……な、何か別の話題を!!
思い切りしっぽを振る子犬のように「褒めて」
とニコニコしている。
うっ……可愛い。
正直今の私には毒だ。
……そうか!
だからほのかは今朝あんなことを言ったんだ。
まるでパズルのピースがはまるように
今日の出来事に合点がいった。
とにかく、変な噂は何とかしなきゃ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。