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第16話

風邪のときはいつも side:楠木


風邪のときはいつも、悪夢ばかりみる。
でも今回は違った。

温かい、太陽みたいな夢だった。

ふと腕の中に小さな抵抗を感じて目を覚ますと、
しーなが真っ赤な顔でこちらを睨んでいた。
椎名まこと
椎名まこと
やっと起きましたか

どうやら保健室らしい。

同じベッドに横になっていて
俺はしーなを抱きしめるように腕を回している……。

つまり​───
楠木大雅
楠木大雅
しーな、俺を襲った?
椎名まこと
椎名まこと
なんでそうなるんですか!
先輩が私に抱きついて
離してくれなかったんですよ
楠木大雅
楠木大雅
俺が?
椎名まこと
椎名まこと
そうです…よ

もごもごと真っ赤な顔のまましーなは俺に抗議する。
なんだかいつものしーなじゃない。

可愛い。

ぼーっとする頭のせいか
なんだか無性に甘えたくなってくる。
楠木大雅
楠木大雅
なぁ、しーな
授業なんかサボって
今から俺を家まで送って
彼女なんだからそれくらいいーだろ
椎名まこと
椎名まこと
そ、その前に
早く離して下さい!
楠木大雅
楠木大雅
じゃあ送ってくれるんだ?
うんって言ってくれるまで離さない

さらにぎゅっとしーなを腕の中に閉じ込めると
弱い力で俺の胸を押してきた。

そんな弱い力じゃ離れてやらねーし。
楠木大雅
楠木大雅
送ってくんないの?
椎名まこと
椎名まこと
うっ!
その顔、ズルいです!
楠木大雅
楠木大雅
しーなの、けち
そう耳元で囁くと
ひゃあと小さな悲鳴が聞こえた。
楠木大雅
楠木大雅
あれ、もしかして耳弱い?
椎名まこと
椎名まこと
ち、ちが!
わ!!わかりました!
送りますから!
楠木大雅
楠木大雅
本当?
椎名まこと
椎名まこと
はい……
午前中だけサボれば
昼からは授業に出れるので

嬉しくて腕の力が緩む。
するとしーながするりと離れていった。


なんだか急に寂しくなった。

ずっと抱きしめていられたらいいのに。
椎名まこと
椎名まこと
それより私のこと
避けてたんじゃないんですか?
楠木大雅
楠木大雅
え?あ、そうだったっけ…
ただ…ちょっとどう接していいか
わからなくなったんだ

するりと素直な言葉がこぼれた。
熱のせいで頭がボーッとする。

楠木大雅
楠木大雅
ほら、送ってくれんだろ?
ん、手!
椎名まこと
椎名まこと
なんですかその手は
楠木大雅
楠木大雅
え?しーなが肩貸して
くれるんじゃないの?
椎名まこと
椎名まこと
その子犬みたいな顔
わざとやってますよね?
楠木大雅
楠木大雅
さあ?

しーなはむっとしながらも俺に肩を貸してくれた。

ちんちくりんで、支えるのもやっとのくせに。
楠木大雅
楠木大雅
 可愛い
椎名まこと
椎名まこと
え?
というかちょっと
体重かけすぎですよ!
楠木大雅
楠木大雅
俺は病人だぞ
ちょっとくらい、いーだろ

そうやってわざとのしかかってみる。
椎名まこと
椎名まこと
 私の気も知らないくせに
楠木大雅
楠木大雅
え?
椎名まこと
椎名まこと
なんでもありません!
家までの道案内お願いします!

女なんて絶対好きになるはずはない。

好きになっても、傷つけられて終わりだ​───。

だから今までは好意が芽生える前に摘み取ってきた。


でもしーなだけは……無理かも。

椎名まこと
椎名まこと
ここが先輩の家ですか?
楠木大雅
楠木大雅
え…ああ

うだうだと考えている間に家についていた。


もちろん父親の車はない。
誰もいない家に急に寂しさがこみ上げてきた。

椎名まこと
椎名まこと
大丈夫ですか?

心配そうな声に
俺はわざとおちゃらけて答える。
楠木大雅
楠木大雅
はは!こんなの余裕だって!
父親は1ヶ月に一回しか
帰ってこねえから、慣れっこだし
椎名まこと
椎名まこと
え……じゃあ
ずっと1人ですか?
楠木大雅
楠木大雅
風邪引いても
いつも一人だったから
気にすんな
椎名まこと
椎名まこと
そう…ですか
じゃあ私は学校に戻りますね
お大事にしてください

くるりと背を向けるしーな。

その背中に少し手が伸びそうになった。

楠木大雅
楠木大雅
(もうちょっとだけ​───)

そんな心の声は届くはずない。
暗い家に入って深くため息を吐いたその時、


ガチャ。

突然玄関のドアが開いた。

椎名まこと
椎名まこと
やっぱり
お粥だけ作っていいですか?
楠木大雅
楠木大雅
しーな…


俺は無意識にしーなを抱きしめていた。