無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

前の話
一覧へ
次の話

第7話

先輩のクズなところ

ペタペタと湿った足音が近づいてくる。
私は覚悟を決め
刃物を持った女子の前に立ちはだかった。
椎名まこと
椎名まこと
ここは通しません
それと、刃物はしまってください
女子
女子
ああ、これぇ?
これも先輩の忘れ物なのぉ
届けたいから、どいて

手に握られていたのは小さなカッター。
刃先がこちらに向けられ、思わず息を飲む。
椎名まこと
椎名まこと
(こ、この子を通しちゃったら
先輩が刺されちゃう!)
椎名まこと
椎名まこと
(そんなことになったら先輩の
女性恐怖症がもっと悪化して究極の
ドクズが誕生!なんてことに……)
刃物を向けられている現実より
世の女性すべてを不幸にするクズ男を
想像してゾッとする。
女子
女子
私は先輩に話があるの
椎名まこと
椎名まこと
先輩が好きなんですね
女子
女子
はぁ?
好きなんて軽いもんじゃないわ
私は先輩を愛してるの
椎名まこと
椎名まこと
愛ですか……
なら私と勝負して下さい
彼女は驚いてこちらを凝視した。
椎名まこと
椎名まこと
先輩のことを本当に
「愛してる」なら彼女の私にだって
勝てますよね?
きっとこうやって煽れば
勝負に乗ってくるはず……。
女子
女子
いいわよぉ?
あなたなんかに負けないし
のった!
椎名まこと
椎名まこと
勝負は簡単です
先輩のダメなところを10個
先に言えた方が勝ちです
女子
女子
なぁにそれ
椎名まこと
椎名まこと
ダメなところを知った上で
それを含めて好きになるのが
本当の愛じゃないんですか?
それとも、もしかして
盲目的に恋してるだけ、とか?
女子
女子
黙って
一際低い声が廊下に響いた。
女子
女子
いいわよ、そこまで言うなら
ダメなところくらい
10個でも100個でも言ってあげる
女子
女子
その代わり
あなたが負けたら
先輩とは別れてもらうから
椎名まこと
椎名まこと
いいですよ!
(本当の彼女じゃないし…)

さっきの甘えたような話し方はどこへやら。
彼女はすごく真剣な表情だ。

​─────ごくり

もし、私が負けたら……どうしよう!

内心ヒヤヒヤしながら彼女の言葉を待った。
女子
女子
先輩は制服を着崩しててだらしないわ
それと、顔が良すぎるところがダメね
椎名まこと
椎名まこと
それってダメなところですか?
女子
女子
うるさいわね!
あと、本当は優しいのに
それを隠してるところ……
私がいじめられてた時
黙ってハンカチを
差し出してくれたの
椎名まこと
椎名まこと
(えっ?あの先輩が!?……それって)
椎名まこと
椎名まこと
人違いじゃないですか?
女子
女子
は?
椎名まこと
椎名まこと
まず前提として、先輩は女子のことを
人だと思ってません!
虫以下か、ゴキブリと同等です
女子
女子
えっ?
椎名まこと
椎名まこと
それに、横暴で、頑固で、
繊細すぎるし、人の話を聞きません!
どんなに人を傷つけても
自覚がないんですよ!?
この前だって私にヒドいこと
言ったくせにキョトンとしてっ……
思わず勝負を忘れて
私情が入ってしまい口を塞ぐ。

目の前の女の子はぽかんとして私を見ている。
女子
女子
あなた、本当に先輩の彼女?
椎名まこと
椎名まこと
(ぎくっ!)
椎名まこと
椎名まこと
と、とにかく!クズな先輩に
あなたはもったいないです!
女子
女子
え?
椎名まこと
椎名まこと
あの先輩は人の好意を
平気でふみにじる男ですよ
椎名まこと
椎名まこと
あんなクズ男やめた方がいいです
あなたの真っ直ぐな好意を
素直に受け取ってくれる
もっといい人がいるはずです
女子
女子
え?あの、ちょっと!

私はぎゅっと女子の手を取った。

力の抜けた手からそっとカッターを抜き取り、
刃をおさめて返す。
椎名まこと
椎名まこと
あとここだけの話
あの先輩鼻クソ食べますよ
女子
女子
はぁあ?!
う、嘘でしょ?

女の子の顔がさーっと青ざめていく。
女子
女子
そんな……ありえない、ありえない
ありえないわ!!

彼女はそのまま
逃げるように走り去っていった。
椎名まこと
椎名まこと
ふぅ……

こ、怖かったぁ〜……!!

なんとか自分を奮い立たせて平常心でいたけど
内心はヒヤヒヤだった。


刺されないでよかったと
ほっと肩をなでおろしたした瞬間​────
楠木大雅
楠木大雅
誰が、鼻クソ食べるって?
椎名まこと
椎名まこと
ひっ!

後ろからぬっと現れたのは
実験室に押し込んだはずの先輩。
椎名まこと
椎名まこと
先輩!?
あの、これはっ
ちょっとした冗談で!
楠木大雅
楠木大雅
ぷっ!あはははははは!
お前、いくらなんでも
鼻クソはねえだろ!
子どもかよ、きったねぇ
お前、ほんと女のくせに色気ねえのな
腹いてえ!

怒るかと思いきや先輩は声をあげて笑い出した。
先輩の屈託のない笑顔は初めて見た気がする。


先輩って、こんなに無邪気に笑うんだ……。
椎名まこと
椎名まこと
ふっあはは!
先輩、笑ってた方が素敵ですね

思わずこぼれた言葉に
先輩の表情は一瞬にして真顔になる。
楠木大雅
楠木大雅
は、はぁ?!
お、お前、調子乗んなよ!
……でも、さっきは、その、ありがとな
椎名まこと
椎名まこと
え?
なんですか?
楠木大雅
楠木大雅
うるせぇ!
やっぱりなんでもねぇよ!
俺は帰る

背を向けた先輩のうなじは
夕日のせいか、かすかに赤く染まっていた。